山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国ITのすごさを印象付けた10のモノ・コト

山谷剛史

2018-07-10 13:03

 中国はすごいという声をよくネット上で目にするようになった。中国はすごいの中でも特に出てくるのが、「中国のITはすごい」という声だろう。昔の中国ITといえば、「海賊版天国」や「ファミコン互換機」をはじめとしたB級テイストのモノやコトばかりだったように思う。

 中国ITについて一貫して書き続けた筆者がこれまでを振り返り、中国のITに印象があったマイナスイメージを払拭し、日本国内のIT界隈で「すごい」と思わせた、流れを変えた事件や製品を10ピックアップして、振り返ってみる。

1.レノボ(聯想)

 最初に無評価の中国IT業界に対して、ひょっとしたら今後中国企業が国際進出をするのではないかと思わせたのが、2004年12月における中国PCメーカー大手「聯想(Lenovo、当年3月まではLegendという名であった)」のIBMのPC部門買収である。

 IBMのPC部門といえばThinkPadだが、ThinkPadのファンが今より多くいた雰囲気のあった当時、レノボの買収によってThinkPadの良さが失われるのではないかと危惧されたものの、ThinkPadらしさは今も保たれ、当時持たれていたレノボへの不安は払しょくされた。その後レノボは、世界においてはIdeaPadなどThink〜以外のブランドも販売開始し、PCメーカー世界首位達成など存在感を高めた。日本においては2011年にNECのPC事業を傘下に、2017年には富士通のPC事業を傘下に収め存在感を増している。またモバイル分野にも進出する中で、2014年にはモトローラ・モビリティをGoogleから買収し傘下にした。

2.淘宝網・天猫

 阿里巴巴(Alibaba)のECサイト「淘宝網(Taobao)」と「天猫(Tmall)」は中国のEC普及の立役者だ。日本でも中国の淘宝網に出品しようという動きが見られた。なお淘宝網は個人対個人取引(C2C)サイトで、天猫は淘宝網の問題点である信用のなさを払拭するために出てきた企業対個人取引(B2C)サイトである。2003年に誕生した淘宝網は、今でいうとYahoo!かんたん決済のようなエスクローサービス「支付宝(Aliapay)」を本格導入して、2005年には中国で当時トップだったeBayを抜き、中国を代表するECサイトとなった。

 その後2008年に天猫の前身となる「淘宝商城」が登場(2012年に「天猫」に改名)。淘宝商城や天猫を舞台とした11月11日の「双十一」ECセール日は毎年記録を塗り替え、驚かされた。また双十一のECセールでは、年を重ねることに配送面も新たな取り組みが行われるようになった。倉庫のスマート化やドローンの導入など、テクノロジーでも世界中のIT関係者に驚きを与えた。

3.山寨機

 いわゆるニセモノケータイであり、広くはケータイを越えてメーカー不詳のデジタル製品もそう呼ばれる。高度な技術不要で携帯電話やスマートフォンが組み立てられる台湾MediaTek社のMTKチップが中国のパーツ市場で展開されると、有象無象のメーカーから無数の携帯電話やスマートフォンがリリースされた。特にスマートフォン普及当初は、MTKチップ搭載製品はメーカー製品よりも安かったことから、スマートフォン普及に一役買った。山寨機はスゴイとショボいが混在していることから、日本では、変わり種のスマートフォンや携帯電話を欲しがる人々の心をとらえた。

4.微博(Weibo)

 中国のウェブサービスは模倣の連続であった。YouTubeに似た動画サイト「優酷(Youku)」などは、コンテンツを見るために日本から見られることがあったが、あくまでモノマネだった。模倣サービスにとどまるサイトがリリースされる中で、米国発のウェブサービスのモノマネという殻を脱したのがTwitter似のサービスからスタートしたマイクロブログ「微博(Weibo)」だ。なおFacebook似のサイトでは、「校内網(のちの人人網)」というサイトが出てきたが、模倣の域にとどまった。 

 Twitter似の類似サービスがいくつも出てきたが、「新浪微博(のちの「微博」、2009年8月スタート)」と「騰訊微博(2010年4月スタート)」が生き残り、サービス競争をしていく(その後騰訊は撤退し、「微博」1サービスのみとなる)。グローバルで展開するTwitterに対し、中国で展開する両微博は最初こそ模倣だったが、頻繁なアップデートでTwitterにできない機能を次々と実装していった。QRコードを本格導入したのは騰訊微博からである。その独自発展を高く評価する声や、日本サイドからの宣伝ツールとして活用しようとする声をよく聞いた。

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