環境(Enviroment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った「ESG」という言葉が、企業経営の新たな取り組みとして注目されるようになってきた。IT業界はこの新潮流を商機につなげたいところだ。
環境、社会問題、企業統治から見たESG投資が増加
ESGはここ数年、欧米の機関投資家を中心に、投資先企業を、財務情報だけでなく、非財務情報も考慮して中長期視点で評価する形で注目されてきた。そうした流れが日本にもやってきたのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年度からESGの観点で優れた企業への投資を始め、企業側もアピールするようになってきたからだ。
ESGが着目されるようになったのは、環境や社会問題、企業統治に積極的に取り組む企業は将来性が高く、不祥事による株価下落リスクも抑えられると見られているからだ。従って、この3つの要素を兼ね備える企業は、持続的に安定した成長や業績拡大を期待できるというわけだ。短期で業績が拡大するとは限らないが、中長期的な投資先を選ぶのに適しているという見立てだ。
筆者が着目するのは、このESG投資に対してIT業界が大きな商機につなげられないかということだ。そんな折り、NECが先頃公開した「サステナビリティレポート2018」において、ESG視点で経営が優先して取り組む9テーマを「マテリアリティ」として特定した。要はESGに取り組むための重点課題である。
その内容は図1に示すように、「持続的な成長実現の鍵」となるテーマ、「成長に向けた変革のエンジン」として取り組むテーマ、そして「社会価値を創出する2020中期経営計画の成長領域」の3層で、合計9つのテーマを特定した。

図1:NECが取り組むESG視点の経営優先テーマ(出典:NECの資料)