IBMは米国時間10月10日、米国防総省(DoD)の「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)プロジェクトが要求する「単一クラウド」という入札条件に関する異議申し立てを、米政府説明責任局(GAO)に対して行った。10年間で100億ドルにもおよぶ可能性があるこのプロジェクト契約の要求事項については、既にOracleも異議を申し立てている。
IBMの異議申し立ては、ベンダーによる入札締切日である12日の2日前に行われた。
同社は単一ベンダーという要求に異議を唱えており、一部の条件は特定のベンダー1社に有利だと主張している。
同社の米連邦担当ゼネラルマネージャーであるSamuel Gordy氏は同社ブログに「JEDIにおける一番の問題は、最長10年間にわたって単一のクラウド環境を必須としているところにある」と記している。
同氏によるとDoDは、「あるベンダー1社の内部プロセスに酷似した」要求を含めたり、作業開始時までではなく入札時までに「ある種の機能を無意味に要求することで」競争を制限しているという。
Gordy氏は「このような厳格な要求の目的はたった1つ、つまり入札者を恣意的に絞り込むことだ」と記している。
そして同氏は「JEDIに関する1年に及ぶやりとりのなかで、要求が特定の単一ベンダーに向けたものだという指摘が何度もなされている。しかし、そうした懸念を和らげる措置は今に至るまで何もとられていない」と続けている。
受注企業は、DoDによる単一のエンタープライズクラウドの構築を支援することになる。このクラウドは機密情報の格納と、武器能力の強化に使用されるとともに、連邦政府におけるデータセンターの統合を可能にする予定だ。
他の入札企業には、最も有利だと目されているAmazon Web Services(AWS)や、2019年第1四半期までに米国防情報システム局(DISA)の策定した「Impact Level 6(IL6)」という、米国の最高機密基準となる認証を取得する計画を9日に発表したMicrosoftが含まれている。
OracleやMicrosoft、GoogleはJEDIをマルチベンダーによる取り組みにするための活動を続けている。
Oracleは8月6日に、入札条件に関する異議申し立てをGAOに対して行ったとNextgovが報じている。同社は5月、AWSのパートナー企業が落札した防衛関連の9億5000万ドル規模の別の契約について、GAOによる裁定を勝ち取っている。
Googleは8日まで、JEDIへの応札姿勢を示していた。しかし、一部の機密データをホスティングするうえで要求されている認証を保有していない点、そしてこの契約が人工知能(AI)に関する同社の指針に沿っていない可能性がある点から、入札への参加を取りやめている。
Googleは、単一ベンダーという要求が出されていなければ、応札していただろうと述べている。
Gordy氏は、単一ベンダーへの依存は「軍の基幹ITに打撃を与えたいと考える敵対者に、集中攻撃するべき単一の目標を与えるようなものだ」と記している。
JEDIプロジェクトを統括するDoDの最高情報責任者(CIO)Dana Deasy氏はThe Washington Postに対し、複数のプロバイダーを採用すると無用の複雑さを招くと述べている。
「われわれはエンタープライズクラウドを構築した経験がない。エンタープライズクラスの機能性を備えたシステムを開発する作業をしながら、複数の企業と取引を始めることは、全く合理的でない」(Deasy氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。