日々の業務の改善を目指し、自社ネットワークのエッジ部分でデータを収集/分析する企業が増えている。
その目的がエレベータや飛行機の予測メンテナンスであるか、油田掘削施設の円滑な稼働に向けて収集したデータの分析であるかにかかわらず、企業は消費電力の小さなエッジデバイスを用いて膨大な量のデータを収集している。
こうしたデータはたいていの場合、分析処理のために、一元化されたデータセンターに送信されるが、エッジで収集されるデータの量が増大するにしたがって、収集される場所に近いところでデータの分析や取捨選択を行う必要性も増してきている。
しかし、ネットワークのエッジ部分にデバイスを配備することで、企業は新たな課題に直面する可能性もある。
エッジコンピューティングを導入した方がよい理由とは
Gartnerのインフラ戦略グループにおけるリサーチバイスプレジデント兼アジェンダマネージャーであるBob Gill氏によると、データの処理やアナリティクスを自社ネットワークのエッジ部分で行うようにする理由は、帯域幅の枯渇や接続性の制約といった問題の解決にとどまらないという。
同氏は、デバイスがデータに基づいてリアルタイムで、あるいはほぼリアルタイムで処理を実行する必要があり、クラウドへの該当データの移送時間が問題となるような場合、エッジコンピューティングを検討すべきだと指摘している。
同氏は「都会の交差点に設置されている信号機群を考えてみてほしい。この場合、エッジコンピューティングによって例えば、これら信号機群に知性を導入すれば、中央に設置されたシステムとやり取りせずとも互いに通信できるようになる」と述べ、例としてSWIM.AIという企業が取り組んでいるエッジアナリティクスについて言及している。
とは言うものの、データ収集用のエッジデバイスでアナリティクスも実行するのが最善の選択になるとは限らない。Forrester Researchで最高情報責任者(CIO)を支援する立場にあるバイスプレジデントのJames Staten氏によると、エッジの近くに配置されているシステムに分析を任せ、エッジデバイスの負荷を低減する必要がある場合もしばしばだという。
同氏は「エッジでの分析は、エッジに配備されているデバイス自体で行えば十分だと考えている企業は多いが、多くの場合はそれでは及第点に届かない」と述べたうえで、「例を挙げると、現在の自動車はさまざまなセンサを搭載して運転者を支援しているが、未来の自動運転車はその自動車以外からのさまざまなデータも集積しなければならない」と続けている。