日立製作所、社員の意欲をデータ化して人事施策につなげる仕組みを開発--自社でも成果

大河原克行

2018-10-17 14:50

 日立製作所は10月17日、企業の人事施策の高度化を支援する「日立人財データ分析ソリューション」を31日から提供すると発表した。これまで把握が難しかった社員の生産性や配置配属などに対する意識をデータとして可視化し、人事施策を高度化できるのが特徴だ。

 提供するソリューションは、生産性向上および配置配属における「社員の意識をデータで見える化」と、採用における「人財ポートフォリオをデータで見える化」で構成される。同ソリューションは、日立社内の技術部門の新卒採用や、約7700人による生産性向上を目的とした実証実験を行い、開発をしてきた経緯がある。生産性などの意識を可視化する独自の測定方法(サーベイ)の実施だけではなく、そのサーベイで明らかになる意識のデータと、勤怠や出張履歴、PCログなどの行動データを掛け合わせて、「Hitachi AI Technology/H」とデータ分析技術を駆使して分析する。部署別のほか、年齢や性別などの属性別分析、報告書作成を行い、個人や組織にフィードバック。結果をもとにした意識改革やアクションプラン策定につなげる。

日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 人事総務本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ ピープルアナリティクスラボ  エバンジェリストの大和田順子氏
日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 人事総務本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ ピープルアナリティクスラボ エバンジェリストの大和田順子氏

 会見したシステム&サービスビジネス統括本部 人事総務本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ ピープルアナリティクスラボ エバンジェリストの大和田順子氏は、「社員一人ひとりの強みや課題、配置や配属のフィット感などを踏まえ、社員がいきいきと活躍し、生産性を高める基盤が構築できる。また、社員の意識改革を促すフィードバックも可能になる。精度の高い人事施策を可能に、採用方針の明確化や、人財育成方針の提案にもつなげたい」とした。

 その一方、「ただし配置・配属については、個人に最も向いている仕事を探したり、それをもとに人事異動を行ったりするものではない。いまの組織にフィット感を感じられない人に対しては、なぜ、いまその仕事をしているのかを理解してもらう必要もある。配置・配属では、個人の今後のキャリアに生かしていけるのか、会社の業績を上げるために必要な仕事なのかといった要素も盛り込むことになる」としている。

 同社では、筑波大学の学術指導をもとに、「生産性サーベイ」「配置配属サーベイ」と呼ぶ測定方法を独自に開発。これを活用した仕組みを「日立モデル」と呼び、個人では(1)心身の調整、(2)効率性、(3)創造性――という3つの階層において、組織貢献意識度や相互刺激感知度といった6つの因子を5点満点で評価し、個人の生産性を、挑戦意欲や役割理解などの観点から定量化する。個人の集合体としての組織の生産性についても、5つの因子をもとに可視化する。

生産性を可視化するアプローチ
生産性を可視化するアプローチ
配置や配属でのフィット感を可視化するアプローチ
配置や配属でのフィット感を可視化するアプローチ

 サーベイでは、例えば顧客訪問時に、「パンフレットを持っていくという意識でいるのか」「日立のソリューションを紹介し、日本全体の生産性を高めるという意識で行くのか」ということや、生産性に影響するといったことも検証できているという。また、金曜日に残業が多い組織や出張が多い組織では、生産性が低いことが判明し、金曜日を「ノー会議デー」にしたり、モバイルPCを貸し出してテレワークを推進するといったアクションプランを提示し、改善を図ったりするといったことも行われたという。

 テレワークやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのさまざまな業務効率化の施策と併せて同ソリューションを活用することで、より効率的な働き方改革のPDCAサイクルを回し、社員や組織のイノベーションの創出や生産性向上につなげられるようになり、「生産性向上に寄与する新たな要因を導き出すこともできる」という。価格は、サーベイの提供では300万円からの個別見積りになる。価格はデータの量や機微性などを考慮することになるという。

日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット IoT・クラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション推進本部の桃木典子本部長
日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット IoT・クラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション推進本部の桃木典子本部長

 同社 サービス&プラットフォームビジネスユニット IoT・クラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション推進本部の桃木典子本部長は、「ビジネス環境や社会構造の変化、さらには日立がモノづくりからコトづくりの事業へと変化するのに伴い、必要な人財タイプも変化してきた。だが、新卒採用の現状をHR Techで分析すると、面接官と同じ課題解決タイプの人材を採用することになり、価値創造タイプの人財が獲得できないという課題があった。」と説明する。

 そして、「2017年度から、価値創造タイプの人材を従来の5%から15%に拡大し、面接官に新たな採用の考え方を徹底するなどの取り組みを行ってきた。人財データ分析ソリューションは、その中で検証を進めてきたものであり、一部組織の新卒採用に人財データを活用した分析を導入し、一定の効果が確認できたことをきっかけに、HRテクノロジーの実証、開発を推進している」との経緯を語った。

日立内部における実証の成果
日立内部における実証の成果

 「入社式では、社長の東原(=東原敏昭 社長兼最高経営者)がスピーチした後に、たくさんの質問が出て、周りが驚いたという現象が生まれた」(桃木氏)という。さらに、「いま、働き方改革を加速する専門組織を立ち上げており、生産性、採用、育成配置配属にフォーカスし、付加価値を生み出す人材採用を進めている。今後は、社員がイキイキと働いていることを見える化することが大切。また結果として、社員の意識が変わっているのか、生産性は上がっているのかということを検証し、さらに成果を高めていきたい」とした。

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