中国Alibabaグループのクラウドサービス事業を担うAlibaba Cloudが日本市場に攻勢をかけている。果たして、日本のクラウド市場にどんなインパクトをもたらすか。
Alibaba Cloudがアピールする「独身の日」を支える技術力

写真1:自社イベントで基調講演を行うAlibaba Cloud JapanのUnique Songカントリーマネージャー
「日本企業のクラウド化率は現在20%程度。まだまだ大きな潜在市場があると見ている」――。Alibaba Cloud JapanのUnique Song(ユニーク・ソング)カントリーマネージャーは、同社が先頃都内で開催した自社イベント「Alibaba Cloud InternetChamp」の基調講演後に行った記者会見で、日本のクラウド市場についてこう語った。(写真1)
Song氏は自社イベントおよび会見で、同社が日本で2カ所目のデータセンターを東京に開設し、日本市場でのクラウドサービスの事業展開に一層注力していくことを発表した。その内容については関連記事をご覧いただくとして、本稿ではこの動きのインパクトについて考察してみたい。
Song氏の話から、筆者が注目した点を5つ挙げる。
1つ目は、Alibaba Cloudのスケールである。現在、中国をはじめ、米国、英国、ドイツ、中東、インド、オーストラリア、東南アジア地域に合計19のリージョンを構え、56のアベイラビリティゾーンを保持。日本ではソフトバンクとの合弁会社SBクラウドが運営主体となり、2016年12月に東京リージョンでのサービスを開始した。
Alibaba Cloudの売り上げは、直近の四半期(2018年7〜9月)で前年同期比90%増の56億6700万元(8億2500万ドル)。Gartnerが2018年に発表した調査によると、IaaS市場でのグローバルシェアは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureに次いで3位となっている。
2つ目は、中国EC市場で大規模なセールが行われる11月11日の「独身の日」の話だ。毎年この日は大量のトランザクションを処理しており、2018年の同日にはAlibabaの「Tmall」で1日の売上高3.5兆円を記録し、ピーク時には毎秒25.6万件の決済処理をこなしてみせた。また、セール期間中には大量のサイバー攻撃も受けたが、Alibaba Cloudは16億件の攻撃を防御し、サービスへの支障は全くなかった。こうした独身の日を支えた技術力を日本市場でもアピールしていきたい考えだ。(図1)

図1:「Tmall」で1日の売上高3.5兆円を記録した「独身の日」