本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アドビシステムズ 代表取締役社長のJim McCready氏と、A10ネットワークス 代表兼社長の川口亨氏の発言を紹介する。
「マルケトの統合により一層インパクトのあるデジタルエクスペリエンスを提供する」
(アドビシステムズ 代表取締役社長のJim McCready氏)
アドビシステムズ 代表取締役社長のJim McCready氏
アドビシステムズは先ごろ、2018年10月に米Adobe Systemsが米Marketoを買収したことを受け、3月1日に日本国内での両社の統合が完了したのに伴い、今後の事業戦略について記者説明会を開いた。日本法人の社長とともにAdobeの日本およびAPAC(アジア太平洋地域)の代表も務めるJim McCready氏の冒頭の発言は、国内でのマルケトの統合による事業展開への意気込みを語ったものである。
国内での両社の統合に伴い、マルケトの代表取締役社長 アジア太平洋日本地域担当プレジデントだった福田康隆氏は、アドビの専務執行役員マルケト事業統括に就任。同社の社員もアドビに合流した。会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではMcCready氏の発言に注目したい。
「アドビは『世界を変えるデジタル体験を』の使命のもと、企業のデジタル変革を支援するためのデジタルエクスペリエンスソリューションの提供を推進してきた。マルケトのエンゲージメントプラットフォームとAdobe Experience Cloudの統合により、あらゆる規模のBtoBおよびBtoC企業のお客さまに、一層インパクトのあるデジタルエクスペリエンスを可能にする比類のないソリューションを提供していきたい」
同氏の冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。
デジタルエクスペリエンスとは、デジタル技術を生かして顧客に感動を与えるような体験(エクスペリエンス)を提供することである。Adobeは現在、クリエイティブなデザインやコンテンツ制作に向けた「Adobe Creative Cloud」、ドキュメント業務を効率化する「Adobe Document Cloud」、企業のデジタルマーケティングを支援する「Adobe Experience Cloud」といった3つのクラウドサービスを提供しているが、デジタルエクスペリエンスはこれらに共通するAdobeの強力なアドバンテージである。
とりわけ、エクスペリエンスの言葉をそのまま使ったAdobe Experience Cloudは、デジタルマーケティングに加えてアナリティクスやさまざまな業務との連携を可能にした、Adobeならではの「エンタープライズクラウドサービス」と見て取ることができる。今回統合したMarketoのソリューションは、このAdobe Experience Cloudのラインアップとなる。
福田氏は今回の統合について、「これまで以上に大規模で完全なソリューションをお客さまに提供できるようになる」と話す。マルケトの統合でアドビならではのエンタープライズクラウドサービスがどう進化し、浸透していくか、注目しておきたい。
左から、アドビシステムズの専務執行役員マルケト事業統括の福田康隆氏、代表取締役社長 日本およびAPAC代表のJim McCready氏、専務執行役員の鈴木和典氏