前回は、SNSに潜むリスク・トラブルの数々を具体的に挙げて紹介しました。今回からは、トラブルの中でも特に個人や企業団体に及ぼす影響が大きい「炎上」をテーマに進めていきます。まずは、「炎上」の定義やその発生プロセスについて見ていきましょう。
炎上とは
日本国内において「炎上」という言葉が使われ始めたのは2010年頃とされ(平成27年版情報通信白書)、それ以来毎年数百件から1000件以上の「炎上」が起きているといわれます。そもそも、「炎上」とはどのような状況(現象)を指すのでしょう。平成27年版情報通信白書における定義を以下に挙げておきます。
“TwitterやFacebookなどのSNSでの不用意な投稿が原因となって投稿者本人が非難に晒されたり、これらのSNSでの消費者の投稿を契機として企業が予期せぬ非難に晒されたりする(現象)”
ここでは「不用意な投稿が(炎上の)原因」とありますが、昨今ではオンラインの事象に限らず、「不祥事」や「従業員の非常識な行動」などオフラインでの事象も炎上のきっかけになっています。「炎上の原因は、数年前よりも多様化している」といえるかもしれません。
炎上の発生プロセス:火種から拡大まで
どんな原因で起きた炎上も、その発生から拡大まではおおよそ同じ流れをたどります。さまざまな「火種」が生まれ、それがソーシャルメディア(SNS、ブログ、匿名掲示板など)に投稿され、多くのユーザーにシェアやリツイートされることで拡散し、まとめサイトやネットニュースなどに掲載されて炎上スピードが加速。最終段階では、テレビや新聞などのマスメディアでも取り上げられ、世間一般に広く知られることとなってしまいます。
以下に、SNSで炎上が発生する基本プロセスをまとめました。ステップごとに解説していきますので、一連の流れを理解していただければ幸いです。
ステップ1:炎上のきっかけとなる事象発生(オンライン/オフライン)
炎上の発生には必ず「原因」(火種)が存在します。昨今はさまざまな事象がもとで炎上が起きる時代ですが、企業が巻き込まれる炎上についていえば、その原因はおおよそ以下の4パターンに分けることができます。
以下に、具体例を挙げて説明します。
■SNS内(オンライン)
(1)企業
- 企業の公式アカウントによる「不謹慎な投稿」「フェイクニュース(デマ)の発信」
- 企業の公式アカウントによる誤投稿(投稿ミス・公式アカウントと個人用アカウントとの切り替えミスなど)
(2)従業員
- 従業員個人による公序良俗に反する投稿(例:過去の犯罪自慢)
- 従業員個人による機密情報や他人の個人情報漏えい(例:開発中の新製品情報、来店した有名人のプライバシー侵害)
- 従業員個人による、フェイクニュースの拡散
■SNS外(オフライン)
(3)企業
- 不祥事、商品/サービスの欠陥(例:不正取引、商品への異物混入)
- センシティブ(デリケート)なテーマを扱った広告・宣伝(例:「人種差別」ともとれるCM)
(4)従業員
- 公序良俗に反する言動(例:社員証を付けたまま電車内でマナー違反)