しかし、クラウドとエッジコンピューティングが登場したことで、製造現場のピラミッドの複雑さを減らし、整備し直すことができる環境が整ってきた。Gross氏は特に、頂点に位置するERPに破壊的な変化が起きると予想している。同氏は、顧客関係管理(CRM)の分野が過去10年間にどれだけ変わったかを考えれば何が起きるか想像がつくはずだと話す。「多くの人は忘れているが、10年前にはCRMはERPの一部だった。しかし今では、クラウドベースのCRMがERPよりもずっと速く成長している。これは、クラウド環境がERPの機能を奪った最初の例だった。クラウドアプリケーションは、ERPよりもずっと革新的で、ユーザーが使いやすく、高度に統合されている。クラウドアプリケーションプロバイダーは大きなイノベーションをもたらしており、それらのアプリケーションはIT部門の業務やERPを侵食しつつある」 (Gross氏)
同氏は、これによって企業の反応の速さと適応力は向上すると語る。「クラウドは、利用する従業員やユーザーやパートナーにとって、より簡単で、直感的で、高速だ。例えば今では、ユーザーインターフェースのみで、クラウドアプリケーションをERPやエンタープライズアプリケーションに統合することができる。5年前であれば、それには大規模な統合プロジェクトが必要だった。しかも、統合作業を始める前の投資だけで100万ドル以上かかってもおかしくなかった」と同氏は述べている。
ただし、Gross氏はすべてのシステムやデータをクラウドに移すよう勧めているわけではない。むしろ同氏は、処理を中央からデバイスに近い場所に分散させるエッジコンピューティングに可能性を見出している。特に製造業の分野の用途では、クラウドのみに依存できないことが多いため、エッジの重要性は大きく高まっている。
エッジコンピューティングが重要なのは、外部に依存せずに運用できるためだ。「通信の接続性が失われた場合でも、システムは動かし続ける必要がある。このため、リアルタイムアナリティクスをインターネット接続に依存させるわけにはいかない」とGross氏は説明する。また、データを集約する必要性もある。「生成されるデータは莫大な量になるため、そのすべてをクラウドに送信するのは合理的ではない」と同氏は述べ、次のように付け加えた。「データは集約する必要があるが、すべてを集約したいわけではない」
またエッジコンピューティングは、クラウドにはつきものの遅延の問題を解決するのにも役立つという。特に製造業では、多くのアプリケーションにミリ秒単位での応答を必要とするが、クラウドではその水準を保証することはできないと同氏は述べている。
(情報開示:筆者はIoT WorldにSoftware AGのゲストとして招かれて参加した)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。