米サンフランスシコで開催されているVMwareの年次イベント「VMworld 2019」の2日目となる米国時間8月27日の基調講演で、同社CTO(最高技術責任者)のRay O'Farrell氏が登壇。デモンストレーションを交えながら、同社の最新のテクノロジーや製品などについて説明した。
VMware Executive Vice President & Chief Technology OfficerのRay O'Farrell氏
O'Farrell氏は講演の冒頭に、「多くのことを達成するために、アプリケーションが中心の世界がやってきている。それが社会を変えている。だが、これを実現するにはクラウドやネットワーク、セキュリティといったインフラが必要である。そして、ユーザーエクスペリエンスが大切になる。これはテクノロジー企業だけの問題ではなく、全ての企業に言えることである。テクノロジーをうまく活用できた企業が競争に打ち勝っている」と前置きし、「だが、モダンアプリケーションを開発する際に、安全で生産性が高い環境を実現できるのかという課題と、目の前にあるテクノロジーをどう利用するのかといった課題がある。これを解決する必要がある」と切り出した。
デモンストレーションでは、“Tanzu Tees”という架空のTシャツ会社を事例に挙げて、事業を推進する上での具体的な課題を上げ、それをテクノロジーで解決する様子を構築、実行、接続、保護、管理、体験といったそれぞれのフェーズで説明。その中で、VMwareが提供する新たな製品やサービスを活用する例を示した。
構築と実行では、オンプレミス環境において、クラウドの体験を提供する「VMware Cloud on Dell EMC」、マルチクラウドの環境でKubernetesのクラスターをエンタープライズレベルで管理する「VMware Tanzu Mission Control」、モダンアプリケーションをvSphereのインフラ上でデプロイする「Project Pacific」をデスモストレーションしたほか、Vmware社内でも毎週50万のコンテナーと、130万の仮想マシンが作られていることを示し、また、Domino's PizzaでもKubernetesを活用してマルチクラウド化を実現している事例を紹介した。
構築と実行のデモンストレーション
接続と保護では、マイクロサービスのパフォーマンスを最適化する「VMware NSX Service Mash」、インフラセキュリティにおいて機械学習を活用している「VMware NSX Intelligence」、ワークロードのセキュリティにインテリジェンスを活用するとともに、Carbon Blackを組み合わせたセキュリティソリューションの「VMware AppDefence」をデモンストレーション。United States Senate Federal Credit UnionがAppDefenceを使用してビジネスアプリケーションを保護している事例を紹介した。
接続と保護のデモンストレーション
さらに、管理では、「VMware Wavefront」「Project Magna」により問題検出を迅速に行うとともに可視化し、機械学習を利用してインフラをチューニングするデモンストレーションのほか、「Cloud Health」ではクラウドのコストを管理し、今後の改善にもつなげることができる事例を示した。ここでは、Zuoraが生産性向上のためのツールとして「Wavefront」を活用していることを紹介した。
管理のデモンストレーション
体験のデモンストレーションとしては、Desktop as a ServiceをVmware Cloud on AWSで展開できる「VMware Horizon Service」や、複数のプラットフォームにまたがるさまざまなデバイスアプリケーションを活用することで、従業員の体験を高めることができる「Workspace ONE Unified Endpoint Management」、Carbon Blackとの組み合わせによってワークスペースのセキュリティを高めることができる「VMware Workspace ONE Zero Trust Security Model」を紹介した。
体験のデモンストレーション
VMware自らがWorkspace ONEを使用して、全世界125のオフィスにおいて1050以上のアプリケーションを6万5000以上のエンドポイントで活用。さらに、Delta Air LinesがWorkspace ONEの長期間のユーザーであり、コックピットで使用するデバイスや社員が使用するデバイスなどを管理している事例を紹介。「Delta Air Linesの社員が、どんなデバイスを使用していても管理できるようになっており、Any Device、Any Applicationの環境で管理ができている」とした。
続いて、シニアバイスプレジデントのGreg Lavender氏が登壇し、「顧客の声を聞くと、数多くのアプリケーションを活用する環境にあること、トータルコストの削減が重要であること、さらに、最適なクラウドサービスを活用したいといった要望がある」とし、それを解決するための製品をVMwareが提供していることを紹介。ARMベースのスマートNICの環境で仮想化の新たな提案を行う「ESXi on ARM」のほか、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureの環境を入れ替えるデモンストレーションを通じて、マルチクラウドの境界線をなくすことができる「Cross-cloud vMotion」を紹介してみせた。
「ESXi on ARM」と「Cross-cloud vMotion」を紹介
なお、O'Farrell氏の講演の最後に、VMwareのPat Gelsinger CEO(最高経営責任者)が登壇。その場で、O'Farrell氏は、同社が持つクラウドネイティブソリューションと買収した新たなソリューションの統合などに取り組むリーダーに就任することを発表するとともに、O'Farrell氏の後任のCTOにLavender氏が就くことが発表された。Kubernetesへの投資の強化やTanzuによる戦略推進、Pivotalの買収といったVMwareの新たな取り組みが、新たな人事の背景にある。具体的な役職名については明確にしていない。
(左から)VMwareのRay O'Farrell氏、VMwareのPat Gelsinger CEO、新たにCTOに就任するGreg Lavender氏
O'Farrell氏は、会期中に行われた報道関係者を対象にした会見で、「Pivotalの買収に伴う作業が発生しており、VMwareの統合をスムーズに進め、ベストな形にすることが私の役割になる。両社の製品を合わせて、いかに顧客に提供するかが重要になる。統合を促進し、製品を提供することにフォーカスしていくことになる」とした。
基調講演の後半には、VMwareのSanjay Poonen COO(最高執行責任者)が、初日の基調講演に続いて登場。2日目の基調講演では、米国のトップスキーヤーであり、オリンピックの金メダリストであるLindsey Vonn氏と、地元アメリカンフットボールチームのSan Francisco 49ersで、クォーターバックとして活躍したSteve Young氏の2人のプロアスリートを招いて対談を行った。
Poonen氏は、「単にPowerPointを使って説明するだけでなく、昨年からやり方を変えて、社会に影響を与える人を招き、情報を提供したいと考えた。Make Your Markのテーマ通り、爪痕を残したい」などとして、対談を企画した意図を説明。Poonen氏がモデレーターとなり、和やかな雰囲気の中、Vonn氏とYoung氏は、自らの経験を通じて得た教訓などについて披露した。
(左から)VMwareのCustomer Operations担当Chief Operating OfficerであるSanjay Poonen氏, Lindsey Vonn氏、Steve Young氏
(取材協力:ヴイエムウェア)