8月末に中国互聯網信息中心(China Internet Network Information Center:CNNIC)から最新のインターネット統計「第44次中国互聯網絡発展状況統計報告(PDFファイル)」が発表された。
それによると、中国のインターネット利用者は8億5400万人、利用率は61.2%となった。この1年間で5200万人の増加となるが、伸びは緩慢になっている。その原因の1つは、農村部の普及率の低さにある。農村部での利用者数は2億2500万人、普及率は26.3%となっており、半年で300万人の増加にとどまっている。また、50代以上の中高年の利用率もいまだに低く、少しはよくなったとはいえ、インターネット先進国となった中国でそのサービスの恩恵を受けられていない。
インターネット未利用者の理由(複数回答可)については、「PCやインターネットが分からない」(44.6%)や「発音表記のピンインが分からない」(36.8%)といった使い方に関する回答が多く、「ネット端末がない」(15.3%)、「歳を取り過ぎた/歳が若過ぎる」(14.2%)、「興味がない」(10.6%)、「ネットをする時間がない」(9.4%)、「ネットインフラがない」(5.4%)と続いた。
インターネット利用率が直近で7~8割に急成長することはなさそうだが、若者の利用が極めて多いこともあり、今後もじわじわと拡大していくだろう。
主な用途別の利用者数を紹介する。まずは近年登場したサービスは次のようになる。
- キャッシュレス(モバイル):6億2100万人(前年末比6.5%増)
- フードデリバリー(モバイル):4億1700万人(同5.1%増)
- ライブストリーミング:4億3300万人(同9.2%増)
- 配車:3億3900万人(同1.9%増)
- eラーニング:2億3200万人(同15.5%増)
- ショートムービー:6億4764万人(同0.1%減)
続いて、定番の利用用途について以下のようになる。
- インスタントメッセンジャー:8億2500万人(前年末比4.2%増)
- 検索:6億9500万人(同2.0%増)
- オンラインショッピング:7億5900万人(同4.7%増)
- 音楽視聴:6億800万人(同5.6%増)
- ネット小説:4億5500万人(同5.2%増)
- 旅行予約:4億1800万人(同2.0%増)
- 理財:1億7000万人(同12.1%増)
アプリの利用数は年齢によって大きな差があり、15~19歳は66個と最も多く、この年代を頂点に、10~14歳は40個、20代は54個、30代は49個、40代は47個、50代は40個、60代以上は33個と下がっていく傾向がある。
この半年における大きな変化として、同レポートでは以下のようなことがあったと挙げている。
- オンラインショッピング:各ECサイトが中小都市や農村部向けに一斉強化。ライブコマースにショートムービーの導入。新興ブランドがECサイトで直売を開始
- ショートムービー、ライブストリーミング:オンラインショッピングのほか、旅行や教育など他ジャンルへの導入
- フードデリバリー:各社が生鮮食品を強化
- キャッシュレス:ETCへの導入や顔認証POS端末の導入が加速
- 音楽:有名曲の版権購入競争からオリジナルコンテンツの強化
- ネット小説:小説ジャンルの多角化、書き手の若者化、中国コンテンツの海外展開する環境の整備
- 配車:大手の滴滴(Didi)に加え、O2O大手の美団(Meituan)や、阿里巴巴(Alibaba)系の地図大手の高徳(Amap)が配車に参入
- eラーニング:人工知能(AI)を融合した教育サービスが続々と登場したほか、農村部の学校でオンラインレッスンの普及が進む
まとめれば、インターネット利用者の増加ペースは緩やかになり、さまざまなサービスが登場するも、空白地帯である中高年や農村部の人々を大きく動かすには至っていない。
オンラインショッピングやキャッシュレスはまだまだ利用者が増える一方、TikTokのようなショートムービーの利用者は頭打ち。ただし、ショートムービーやライブストリーミングはオンラインショッピングや旅行や「K12」と呼ばれるeラーニングなどに導入され、活用される傾向になってきた。
コンテンツ系に関してはオリジナルコンテンツでちゃんと儲かるようなエコシステムが、音楽やネット小説などで見られるようになったというのが2019年前半の動きである。
- 山谷剛史(やまや・たけし)
- フリーランスライター
- 2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。