日本全国でペーパーレス化が進みつつあるが、紙をなくすことはできないと考えている方も多いのではないだろうか。デジタル化したファイルで事足りたり、コンビニなどを活用して外で印刷できる機会も増えたりしているとはいえ、出力機器が皆無というオフィスはまだまだ少ない。
カラーかモノクロか、顔料やプラスチック粒子でできた粉末で構成するトナーを紙に転写する“レーザープリンター”か、液体インクを用紙に直接噴射する“インクジェットプリンター”か、はたまたコピーやスキャンといった印刷以外の機能も備えた“複合機”なのか。いくつかの選択肢はあるが、いずれにせよ紙にできるなんらかの出力機器はあるはずだ。
ここでは、一般的なオフィスでの活用を想定し、特長やラインアップなどをベンダーごとに紹介していく。第6回はブラザー工業(ブラザー)。
1908年、ミシンの修理業を営む安井ミシン商会が創業。1926年には安井ミシン兄弟商会へと商号を変更、1934年には改組して前身の日本ミシン製造を創立している。1971年、アメリカのCentronicsと共同で小型コンピューター向けの高速ドットプリンターを開発。電子制御技術と印字ヘッドの自社開発にも取り組み、1987年にNTTと共同で開発したファクス、1994年のレーザープリンターなどに継承されたという。
現在では、A3からA4までのコピー機や複合機を幅広く揃えるインクジェットの「PRIVIO」シリーズ、A4レーザーのプリンター、複合機「JUSTIO」シリーズなどを展開している。
インクジェットの風向きが変化--家庭からオフィスへ
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PRIVIOシリーズでの主力製品は、2018年に投入した大容量のインクジェット「ファーストタンク」だ。標準機種と比較してブラック約16本、カラー約10本分のインクカートリッジを搭載。1回のインク交換での印刷可能枚数はA4モノクロの場合、約375枚から約6000枚に向上するという。
野村氏
ブラザー製品の国内販売を手がけるブラザー販売のマーケティング推進部 商品企画1グループ ソリューションプロダクトチームでマネージャーを務める野村和史氏は「今まで家庭向けとされてきたインクジェットのとらえ方が変化しつつある」と、オフィスでの需要が増えていると説明。
A3複合機で多目的トレイに加えて3段トレイを備える「MFC-J6999CDW」、2段の「MFC-J6997CDW」などを中心に、オフィス向けモデルのラインアップ強化に注力していると語る。
レーザーはA4モノクロ--特徴的なコンセプトが決め手
ブラザー製品の特長の一つとして、前面から給紙、インク交換が可能、正面から上部に制限がある棚の中などでも設置できるコンパクトさがあるというが、JUSTIOシリーズではその点をさらに追求したA4モノクロプリンター「HL-L2375DW」が好調だという。
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「設置空間が小さい金融機関などの窓口業務や店舗のバックヤード、SOHOや部署ごと、会計や受注などの業務専用機など、幅広いニーズがある。膝下にも設置し、1歩2歩足を運ぶ部分まで効率化したいという声もあった。低価格帯の商品となるため分散させての設置、個人用での購入なども多い」(野村氏)
あまり他ベンダーが揃えていないコンセプトの製品ということもあり、ブラザーの中での割合はかなり高いようだ。
野村氏は「確かにシュリンクしているが、加えて平均単価が低価格帯にシフトしている」と市況観を説明。「お金や接地スペースなどに縛られない“なんでもこなせる大型の1台”は最適解の一つではある。しかし、分散させたいというニーズも感じている」(野村氏)。より細かなニーズに幅広く対応できる“ユーザーの選択肢の拡張”がブラザーの製品戦略の背後にあると説明する。