本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTデータ代表取締役社長の本間洋氏と、シスコシステムズ代表執行役員社長のDave West氏の発言を紹介する。
「コロナの影響は予断を許さないが、経済活動は10月以降に徐々に回復する」
(NTTデータ代表取締役社長の本間洋氏)

NTTデータ代表取締役社長の本間洋氏
NTTデータは先頃、2020年度(2021年3月期)第1四半期決算とともに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うビジネスへの影響および2020年度通期業績予想を発表した。本間氏の冒頭の発言はオンライン形式で行ったその発表会見で、今後の景気の見通しについて「仮定」と前置きして語ったものである。
本間氏は自社のビジネスにおけるコロナの影響について、マイナスとプラスの両面を次のように挙げた。
まず、マイナス面については、「国や業種ごとに違いがあるものの全般的にマイナスの影響を受ける。また、既存案件の拡大や追加案件を中心に、時期の遅れや規模縮小、開発自体の中止が発生する」ことなどを挙げた。
一方、プラス面については、「デジタル技術を活用した新たな社会構築のためのビジネスが加速し、当社が貢献できる新たな事業機会が増加する。また、デジタル技術を活用したアフターコロナにおける良い社会構築のためのビジネスの多くは、2020年度から検討や投資が始まり、2021年度以降に業績に反映されるようになる」との見通しを語った。
ビジネス分野別では、例えば金融分野の場合、「デジタル技術を活用した新サービスの提供や、業務効率化を目的としたペーパーレス化やキャッシュレス化の取り組みの活性化によりプラス影響が見込まれる」とした一方、「バンキング領域を中心に、市況の不透明感や地域経済の悪化によりIT投資が抑制傾向にあり、開発着手やサービス開始の延伸などによりマイナスの影響が出始めている」との見方も示した。
また、同社の分類で「法人・ソリューション」としている他の産業分野では、「ペイメント領域ではECサイトの利用増加による需要拡大を見込むが、訪日外国人の減少によるショッピング・キャッシングの利用減少も見込まれ、前年と同水準を想定している」とのこと。さらに、「流通サービス業における流通・交通・旅行領域、製造業における自動車・機械領域は、自粛による需要減、IT投資の抑制によるマイナスの影響が大きいと見込まれる」とも述べた。
こうした状況を踏まえた上で、同社はこれまで未定としていた2020年度通期の業績予想を今回公表した。その内容は表にあるように、減収減益の計画となった。同社は設立以来増収を続けてきたが、この計画通りになると「32期連続増収」は果たせなくなる。

NTTデータの2020年度通期業績予想(出典:NTTデータ)
本間氏はこの点について、「現状で増収を続けるのは厳しいと見ているが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要などには手応えを感じており、なんとかもう少し数字を上乗せできるように頑張っていきたい」と決意のほどを語った。冒頭の発言には、そうした期待もにじみ出ているといえそうだ。