正しい経路の申請と承認が前提となるため、会社側のチェックと従業員への説明が必要不可欠となる一方で、チェックや従業員の申請方法のシステム化が進むほど、運用負荷を低減させることができます。
このように、制度や運用を検討するときには、自社の通勤手当が「手当」なのか「実費」なのか、を明確にしておく必要があります。そうでないと、制度に細かく金額や距離の制限を定めながらイレギュラーは認める、という、担当者のチェック負荷が高いわりに、従業員の納得性が低い制度となってしまう可能性があるでしょう。
仮に、時間帯別の運賃を導入する場合は、従業員がいつ出社し、その時に利用した運賃がいくらだったかを捕捉する必要があります。そのためには、出社時の運賃を本人から申告させる、交通機関から実支給額データを何らかの形で提供してもらい給与へ反映するなど、実費を捕捉するための運用やシステム設計も必要となるでしょう。
そのような方法が可能かどうかは検討するとして、仮に実現することができれば、従業員にとって理解の得られる仕組みとなる可能性が高いといえます。
後編では、上記を踏まえて運用負荷を低減させるためにどのような制度設計をすべきかについて解説します。
- 伊藤裕之(いとう・ひろゆき)
- Works Human Intelligence カスタマーサクセス事業本部 シニアマネージャー
- 2002年にワークスアプリケーションズ入社後、九州エリアのコンサルタントとして人事システム導入と保守を担当。その後、関西エリアのユーザー担当責任者として複数の大手企業でBPRを実施。現在は、17年に渡り大手企業の人事業務設計・運用に携わった経験と、1100社を超えるユーザーから得られた事例・ノウハウを分析し、人事トピックに関する情報を発信している