戸田建設の働き方を変えたDropbox--クラウドストレージの先に見えた“新しいOS”

石田仁志 藤代格 (編集部)

2020-12-25 06:45

 1881年創業、2021年に140周年を迎える戸田建設(中央区、従業員数約5600人)は、業界準大手のゼネコンである。総合建設業として建築工事と土木工事を請け負う中で、特に前者に強みを持ち、建築工事についてはこれまでに国内の重要文化財となっている建築物を数多く手がけ、「建築の名門」と称されている。

 社歴は長いが、時代の変化に対応するのは早いという企業文化を持ち、例えば環境関連では国際標準化機構(ISO)の「ISO9000」「ISO14000」シリーズといった国際規格の認証取得や、産業廃棄物を出さないで工事を進める「ゼロエミッション」活動にも早期に取り組んでいる。

 IT活用についても同様で、「1990年代半ばには国内のほぼすべての事業所をイントラネットでつないだ。Appleの初代iPadが販売された際には初日に並んで購入、社内に取り入れて会議のペーパーレス化を推進したり、さらには他のゼネコンと連携してアプリを開発したりするなどの取り組みを進めてきた」と、戸田建設 建築工事統轄部 建築工務部 生産システム推進1課 課長の池端裕之氏は話す。

東日本大震災を契機にクラウド活用を開始するも

戸田建設 建築工事統轄部 課長 池端氏
戸田建設 建築工事統轄部 課長 池端氏

 クラウドサービスの活用も早く、2011年に発生した東日本大震災を契機に、事業継続計画(BCP)対策としてGoogleの「G Suite」を採用。それまでは全国の建築現場の事務所ごとにサーバーを立て、現場で使う資料やデータをネットワーク接続ストレージ(NAS)に保管していたが、「Google Apps」と「Google Drive」によってデータを保存して社内で共有できる環境をクラウド上に構築した。

 このときからBCP対策としてのクラウドストレージ環境を用意していたが、一方で新たな問題が浮上してきた。それまで2次元CAD (2DCAD)だったデータが、デジタル環境の進化に伴ってビルディングインフォメーションモデリング(BIM)や3DCADを使用するようになったことで肥大化し、それをどうやって一元管理するか、大容量の図面データを社内や外部とどう共有するかを解決する必要が生じたのである。

 ゼネコンは、外部の設計事務所や多くの協力会社とデータを共有して作業しており、設計変更が頻繁に発生する。従来は設計データの受け渡しにメールを活用していたが、データの大容量化に伴い添付容量を超過。メールではデータが送れず、別のファイル転送サービスを併用する形となっていた。

 その際、Googleの利用を禁止している会社も多く、Googleのアカウントを作れる会社としか共有できないGoogle Driveは、外部との共有環境として機能しなかった。さらに社内でも、「リアルタイムでファイルを操作するには使い勝手が良くなく、ファイルの保管庫のような使い方にとどまっていた」(池端氏)という。結局、それぞれの現場の事務所では引き続きNASサーバーを活用していた。

NASとGoogle Driveを併用(出典:戸田建設) NASとGoogle Driveを併用(出典:戸田建設)
※クリックすると拡大画像が見られます

 「最大800カ所くらいの現場があるなかで、現場の工事が終わったら責任者の所長が次の現場へNASサーバーを持って引っ越していく。すると社内でデータの所在が把握しにくくなり、実際に基盤障害でデータが見られなくなるケースもあった」(池端氏)ことから、同社ではNASサーバーの代わりになる新しいクラウドストレージサービス導入の検討に入った。

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