
パソナグループ 常務執行役員 広報本部長 髙木元義氏
その理由としてパソナグループ 常務執行役員 広報本部長 髙木元義氏は「われわれは『雇用を作る。人材を育成する。そして文化を育む』の3軸で挑戦を重ねてきた。本社機能の移転もその一環。狙いの1つはBCP(事業継続計画)対策。次に真の豊かな働き方、生き方。そして自然豊かな環境と夢のある新産業の創造」が移転の意図だと説明した。
地方活性化を考えるパソナグループ
セッションでは、オフィスリニューアルや本社機能の移転から見込んでいる変化を各社に聞いた。
クックパッドの福崎氏は都心のオフィスで得られなかった価値があると主張した。
「発表2週間ほど前から横浜で働いているが、横浜中央市場に訪れ、自宅近くのバーベキュー場を楽しんできた。だが、意思や熱量を確認する上でオフィスは重要。思いや展望を(社員同士で)語り合う空間は必要だ。(横浜は)都心よりも人が集まりやすく(山々に築いてきた)街並みからも多くの刺激を受けている」
パソナグループの髙木氏は期待をこう語った。
「すでに100人以上のメンバーが移住を始めているが、乳幼児を抱えた家族ごと移転するケースも珍しくない。淡路島の海沿いや山々の『どこで働いてもよい』という仕組みのため、多様な社員が混ざり合っている。重要なのは地方活性化。日本のGDP(国内総生産)の7割は地域社会の経験が担ってきた。地域経済圏の活性化をたとえば、東京や大阪から企画、運営するのは正しいのだろうか。地方の課題を自ら肌で感じ、触れ合い、ともに解決することを長期スパンで取り組んでいく。私自身も本当に楽しみでしょうがない」

コクヨ 代表取締役 副社長 坂上浩三氏
コクヨの坂上氏は以下のようにオフィスの重要性を強調した。
「(THE CAMPUSの1階に)文具ショップを用意し、夕方になると保育園帰りの親子が文房具を見ながら楽しんでいるが、このようなシーンを経営層は目にする機会が少なく、作ってよかったと感じている。また、新入社員とのちょっとした触れ合いも大事だ。たとえば『今日は何食べた?』など気軽に会話する機会も起こりうる。やはり会話が自然に生まれるのはよい効果につながると思う」
オフィスの役割はプラットフォーム
オフィスの役割についても議論が交わされた。
クックパッドの福崎氏は「プラットフォーム。われわれが作るサービスは課題を解決するだけではなく、場所作りを目指してきた。プロジェクトの議論も数年レベルではなく5年、10年、20年という長いスパンで行ってきた。テレワークは短期的な目標の達成に注目が集まるものの、企業は展望や意思といった思いを達成するために存在する」と述べた。
パソナグループの髙木氏は「同感だ。今後求められるのはクリエイティブな発想力。共創機会は増えていくが、互いが意見を出しやすい環境は重要だ。カチッとしたオフィスが大事ではなく、互いがリラックスした環境下で自由な発想で議論できる場が必要だろう」と付け加えた。
コクヨの坂上氏も「お二方と目先を変えたお話をすれば、月曜日の出社を連想する『日曜日の夜は憂鬱』になってしまう時代は長かった。いかに魅力的なオフィスにするかが、クリエイティビティを高める上で重要だ」と異なる角度から創造性を高める手法を提案した。