2020年にはコロナ禍で経済が大きく混乱したが、多くの企業の最高経営責任者(CEO)は、今後経済は急回復すると考えている。
Gartnerは、欧州、中東、アフリカ(EMEA)、アジア太平洋地域(APAC)のさまざまな業界や規模の企業のCEOや経営幹部465人を対象として2020年7~12月にかけて調査を行い、今後の経済回復や取り組みについてどのような見通しを持っているかを尋ねた。
調査によれば、経営者の60%は2021年と2022年に好景気になると考えている一方で、40%は景気の停滞を予想していた。2021年の自社の業績が2019年並み以上の水準まで回復するかという問いに対しては、35%が回復すると答えた。
ただし多くのCEOは、コロナ禍によって起きた社会変化の一部はそのまま定着すると考えている。将来に向けての優先事項や今後起こる可能性のある変化について尋ねる質問では、多くの回答者がテクノロジーの変化に言及しており、5人に1人は自由回答の中で「デジタル(digital)」という単語を使っていた。
GartnerのDistinguished調査担当バイスプレジデントKristin Moyer氏によれば、回答者が予想した顧客の行動変化のトップ3には、デジタル技術の利用拡大と、デジタルチャネルの柔軟性に対する需要が含まれているという。Moyer氏は「このことは顧客にデジタル的にサービスを提供する手段の改善が重要であることを示している」と述べている。
企業のCEOが2021年中に投資を増やす予定だと答えた唯一のカテゴリーが「デジタル活用能力」だ。多くの回答者は、業界の影響力が最も高い技術として人工知能(AI)を挙げている。また、30%以上が、長期的な事業計画で量子コンピューティングが非常に重要になると話した。ブロックチェーンや5Gを挙げる回答者もいた。CEOの3分の1は、これらの技術を巡って起きている米中間の通商摩擦に懸念を示した。
回答者が優先事項として挙げたもう1つの項目がM&Aの強化だ。レポートによれば、将来に向けての戦略を尋ねる質問の自由回答で「売上高(sales revenue)」などの用語が使われる頻度が減る一方、「新規市場(new markets)」という用語の使用が増えたという。
GartnerのDistinguished調査担当バイスプレジデントKristin Moyer氏は、「CEOが挙げた2021年の優先事項には自信が表れている。回答者の半数以上が第1に成長を重視するとしており、今回の危機はチャンスの裏返しだと考えている。これに、技術変革、コーポレートアクション(有価証券の価値に影響を及ぼす企業行動)が続いた」と述べている。
「2021年はすべてのリーダーが、コロナ後の世界がどうなるかを読み解き、中長期的なビジネス戦略を再構築することに努めることになるだろう。多くの場合、それによって企業の能力や、場所や、製品や、ビジネスモデルに関する一連の新たな構造変化が明らかになってくると考えられる」
世界の多くの地域では新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでおり、一部の地域は普段の生活を取り戻しつつあるものの、回答者の80%以上は、ハイブリッドな仕事環境への移行などをはじめとする、変容した行動の一部は定着すると予想している。
また多くのCEOは、消費者需要の低下を懸念しており、一部の回答者は、コロナ禍の影響が去った後も需要の低迷は続くと予想している。特に旅行業界については、消費者の間でも、企業の支出を管理している最高財務責任者の間でも関連する支出需要が低下した状態が続くと考えられている。
また多くの国で社会的公正や持続可能性の問題が重視されるようになっており、CEOの40%弱は、社会的公正に対して積極的な態度を取ることが自社のビジネスや従業員に良い影響を及ぼすと考えている。さらにCEOの45%は、気候変動への対策はビジネスに大きな影響を及ぼしていると回答した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。