なぜDXが必要なのか--レナウン、コダックの失敗にみるデジタルの重要性 - (page 2)

伊達諒

2021-06-09 07:00

サブスクリプションという新しいビジネスモデル

 ビジネスモデルの転換例として注目を集めているのが「サブスクリプション」です。

 これまでの商売は、商品を販売することが目的で、売ってしまえばそれで終わりというものでした。

 しかし、最近では、利用に対して対価を払うというスタイルが広がってきました。使わなければ解約されるというリスクはありますが、継続してもらえれば安定して収益が得られるというメリットがあります。

 このようなビジネスモデルが実現したのもデジタル技術が浸透したからです。サブスクリプションというのは、支払いの管理や顧客の管理が必要になります。常にインターネットにつながっている環境があるからこそ、社員がいつでも管理画面を見られるようになり、このようなスタイルが取れるようになったわけです。

 サブスクリプションのメリットは、その他にもあります。それは、顧客との関係を継続できるということです。売り切り型の商売は、売ってしまえば顧客との関係が切れてしまいますが、サブスクリプションの場合、利用状況が続くのでコミュニケーションが取りやすいという特徴があります。

歴史に学ぼう

 経営学でよく取り上げられる事例として、「Kodak」と「富士フイルム」があります。両社はフィルムメーカーでしたが、フィルムカメラはデジタルカメラの登場によって、ほぼ消滅しました。それに伴い当然フィルムの需要もなくなりました。その結果、Kodakは倒産してしまいました。

 一方、富士フイルムは、ご存じのとおり倒産していません。その違いは何かというと、富士フイルムは、フィルム技術を応用して、化粧品や薬品などにすみやかに事業転換したからです。危機に対して機敏に行動できるかどうかで、ビジネスを存続できるかどうかが分かれた好例とされています。

 デジタル社会の波はどんどん迫ってきています。すみやかに、デジタル社会に対応した事業転換ができなければ、Kodakのようになってしまうということです。

IT人材の確保とコストの問題

 DXに取り組むと決めた場合、次に問題となるのが、IT人材の確保やコストの問題です。社内にIT人材がいない場合、IT人材を新たに雇うか、外部のIT会社に依頼するかを考えなければなりません。いずれにしても、コストが発生するので、その負担が心配ということがあります。

 システム開発というと「開発費用が高い」というイメージがあると思います。実際、規模によってピンからキリまでですが、大規模なシステムだと数億円のお金がかかります。また、開発期間も長期に及ぶというのが一般的です。ただ、最近では、だいぶコストが下がってきており、簡易なシステムであれば数カ月、数万円という価格で作れる場合もあります。

 今回の連載で紹介する「FileMaker」というソフトは、一般的なプログラミング言語を一度も使用したことがない人でも、少ない手間でデータベースによるシステムを構築できるローコード開発プラットフォームです。お金はあまり掛けたくないという場合には、自分でシステムを作成するということも検討してみるとよいと思います。「自分で作れるか自信がない」という人もいるかもしれませんが、本連載を読めば、基本的なシステムは作れるようになりますので安心して下さい。

DXへの取り組み方

 DXの方針は最終的には経営者が決めることですが、1人で決めなければならないということではありません。DXを推進していくためには、DXについて考える部署を作るのが最も望ましい形と言えます。一般的業務をやりながらDXについて考えるというのは現実的に難しいからです。

 もっとも、新しい部署を作ることは簡単ではないので、各部署からタスクフォースのような形で人員を召集し、定期的にDXについて議論するという方法でも構いません。もし、社内にIT人材がいないという場合には、外部のITコンサルなどに相談することもよいでしょう。

 「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、デジタル社会の到来というピンチをチャンスに変えられるかどうかは、経営者次第です。まずは思い切って一歩を踏み出す、そこから始めてみてはいかがでしょうか。

(第3回は6月中旬にて掲載予定)

伊達 諒(だて りょう)
日本銀行で金融機関の経営分析、厚生労働省で政策の調査業務、内閣府でSEを経て、フリーライターとなる。MBA、CFP、一級FP技能士の資格も有しており、金融、経済、IT、経営、会計、税、行政と幅広い分野での執筆活動をしている。これまで、大手メディアを中心に、500本以上の記事を執筆している。

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