Amazon Web Services(AWS)とSalesforce.comがグローバルな戦略的提携を拡大した。ユーザーにとってはマルチクラウドでの利用が広がる形だが、今後こうした動きが一段と活発になってくると考えられる。そこで、システムインテグレーター(以下、SIer)に求めたい。ユーザーが参考にできるマルチクラウド適用事例をどんどん情報公開してもらいたい。
AWSとSalesforceの提携拡大でマルチクラウド利用が活発に
AWSとSalesforceが米国時間6月23日に発表した提携拡大では、ユーザーが両社のサービスを活用して新たなビジネスアプリケーションを開発したり、サービスの連携により新たなソリューションを利用できるようになることをアピールしていた。
その内容については米国発の速報をご覧いただくとして、ここでは今回の発表に向けた両社トップのコメントを紹介しておこう。
「両社は5年以上にわたって緊密な関係を築いており、お客さまはその恩恵を受けている。今回、両社のサービスをどちらも利用する開発者が、統合されたアプリケーションをこれまで以上に迅速かつシンプルに構築できるようにすることで、両社の提携レベルを次の段階に引き上げたい」(AWS CEOのAndy Jassy氏、同氏は米国時間7月5日にAmazon.comのCEOに就任)
「今回の提携拡大で、より強力に統合されたSalesforceとAWSのプラットフォームにより、世界中のお客さまは、セールス、サービス、マーケティング、コマースにまたがって信頼できる唯一の情報源を作り、どこからでも成功を収めることができるようになる」(Salesforce.com CEOのMarc Benioff氏)
こうした提携話の場合、お互いの姿勢や全体のイメージを掴むには、両社トップの発表に向けたコメントが一番分かりやすいというのが、筆者の見方である。
さらに、この提携拡大の一環として、日本市場を対象に、セールスフォース・ドットコムが7月15日、AWSのコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」と「Salesforce Service Cloud」を統合させた「Servive Cloud Voice」を提供開始すると発表した。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは発表会見での両社日本法人幹部の発言を紹介しておこう。
「両社は2016年に提携を発表してから、これまでさまざまな領域で連携を図ってきた。今回のソリューションは、両社のサービスを連携させた第一弾の商品となる」(セールスフォース・ドットコム 執行役員ソリューション営業本部 本部長の湯浅雅達氏)
「SalesforceのCRM(顧客関係管理)とAWSのCX(カスタマーエクスペリエンス)ポートフォリオを活用することで、迅速、柔軟、拡張性のあるカスタマーサービスをお客さまに提供することができる」(アマゾン ウェブ サービス ジャパン パートナーアライアンス統括本部ISVパートナー本部 本部長の阿部泰久氏)
図1が、両者の発言を図示したものである。
図1:AWSとSalesforceの提携拡大の概要(出典:セールスフォース・ドットコムおよびアマゾン ウェブ サービス ジャパン)
このようなAWSとSalesforceの提携拡大の内容を見ると、今後はいわゆる「マルチクラウド利用」が一段と活発化していくものと考えられる。