コロナ禍の影響によるリモートワークは市民権を獲得したと言えるが、今後、リモートワークはどのようになっていくのだろうか。
セールスフォース・ドットコム Slackアライアンス本部 シニアディレクター 水嶋ディノ氏
Slack Japanは10月5日、四半期ごとに公開している「リモートでの従業員体験レポート」の記者説明会を開催。調査結果について、セールスフォース・ドットコム Slackアライアンス本部 シニアディレクター 水嶋ディノ氏は「リモートワークは『場所』に意識が向いてしまうが、時間の柔軟性が重要。(経営層と非経営層における)『仕事への満足度』(の相違が)が興味深い」と感想を述べた。
従業員と経営層で意識が大きく異なる
Slackが立ち上げた団体「Future Forum」は、フルタイム勤務する知識労働者の意識を浮き彫りにする「Future Forum Pulse」を四半期ごとに発表している。4回目となる今回は、グローバルの1万569人(国内は約1000人)を対象に7月28日~8月10日の2週間調査した。その結果を見ると「オフィス勤務に戻ることに対する経営層と、一般従業員の意向に大きなズレが生じている」(水嶋氏)
1年以内に転職を考える可能性がある割合は57%と前回調査時から増加傾向にあり、仕事に対する満足度を高める要素として「柔軟性」が2位に浮上した。加えて76%の回答者が働く「場所」、93%の回答者が「時間」に対する柔軟性を求めている。
興味深いのは勤務場所に対する意向だ。
連日オフィスで働きたいと希望する日本人は31%(平均24%)と突出して高い。それでも69%はハイブリッドワークやリモートワークといった労働形態を望み、「インクルージョン(社会的包摂=この場合は組織における一体性)を促進させている」(水嶋氏)
性別で確認すると、女性従業員は85%、男性従業員は79%。水嶋氏は「特にお子さんを持つ女性は(柔軟かつハイブリッドな)働き方を重視する傾向が高い」と説明した。
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対する経営層は、コロナ禍以前のフルタイムオフィス勤務に戻したいという希望を持っている。今回の調査によれば、フルタイムオフィス勤務を望む経営層は44%、フルタイムオフィス勤務を望む従業員は17%と大きな差が生じた。リモートワーク中の企業でも、週3~5日はオフィスに戻りたいと回答する経営層は75%と高いものの、従業員は34%と同様の傾向がうかがえる。
このように経営層と従業員の意識が「大きく異なる理由は3つ。『仕事に対する満足度の相違』『偏った意思決定プロセス』『透明性の欠如』だ」(水嶋氏)
経営層の仕事に対する満足度は62%と従業員よりも高く、前回調査から経営層は3%増、従業員は5%減と差が広がっている。意思決定プロセスも66%の経営層がコロナ禍後の働き方に対して、従業員の意見を取り入れていないと回答した。
なお、69%の経営層は、意思決定者が最高経営責任者(CEO)であり、最高人事責任者(CHRO)と回答した割合は3%と「人事トップの声は反映されていない」(水嶋氏)。同じくコロナ禍後のリモートワーク方針について、「透明性が非常に高い」と考える経営層は66%と半数以上を占めるが、「透明性が非常に高い」と考える従業員は42%と半数にも満たない。
経営層と従業員の意識に生じた溝を埋めるために、水嶋氏は「『柔軟性を備える』『インクルージョンを育み奨励する』『透明性を高めてつながりを築く』ことが重要。ギャップを埋めるのが人材獲得競争に勝つための鍵」と強調した。
たとえば透明性を担保できないと考える従業員は、満足度がマイナス26.7%、人材定着率はマイナス17.3%と自己否定につながる傾向がうかがえる。他方で透明性が高いと回答した従業員は所属する企業の将来に期待する割合が高く、透明性の可否で「帰属意識や将来性の期待を醸成できる」(水嶋氏)ことが明らかになった。
働く場所と時間の両方で柔軟性を企業が体得するために水嶋氏は、「テクノロジーやITツールの採用が必要」だと述べつつ、社内外コミュニケーションを実現する「Slackコネクト」、音声や動画などを共有する「クリップ」、雑談を再現する音声を主体としたコミュニケーション機能の「Slackハドルミーティング」を挙げた。
「われわれは顧客の声を取り入れながら製品開発を続けている。重要なのは非同期型コミュニケーションとの組み合わせ」(水嶋氏)
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