クアルトリクスは、埼玉大学 宇田川元一准教授との共同研究「職場における孤立の実態調査」の結果を発表した。
これによると回答者の56%が職場に仕事上の相談相手がいるとした一方、より広いつながりとして職場以外にも相談相手がいる、自分から積極的に他者に働きかけるとした回答者は5割に満たなかった。「直属上司のアドバイスやワークライフバランスへのサポート」に肯定的な回答をしたのは全体の4割未満で、勤務先が社内の人間関係を強化するような施策や制度を導入しているとした回答者は2割にとどまった。
この調査は、コロナ禍において職場で孤立する従業員に焦点を当て、その実態と業務への影響を把握する目的で行われた。2021年10月に実施し、有効回答数は4435人だった。設問設計には、宇田川准教授が協力した。
分析に当たっては、仕事関連での人とのつながりに関する設問項目への回答の平均点が、全体の上位25%以上に含まれる回答者を「連携グループ」、下位25%以下に含まれる回答者を「孤立グループ」と分類し、両グループの中間にいる人を「平均グループ」とした。
孤立グループでは、性別では男性、年齢別では40代、役職別では一般社員(非管理職)、勤務先の従業員規模別では500人未満の中小・中堅企業などの属性を持つ人が、連携グループよりも高いことが確認されている。
昨今のHR(人材)分野における重要指標と考えられるエンゲージメント、ウェルビーイング、帰属意識に関し、連携グループと孤立グループの回答を集計したところ、いずれも孤立グループの水準の低さが顕著であることが示された。人とのつながりが希薄化すると、組織に対する帰属意識が低下することはもちろん、心身の健康やエンゲージメントまでも低い水準にとどまることが分かった。
孤立グループでは、業務分担の適切さ、関係者の議論に基づく意思決定のほか、職場において学び・成長する機会などに対して肯定的に捉えている回答者がわずか10%台にとどまった。担当する業務量が少ないとした回答者、自身の業績を組織の平均以下とした回答者を見ても、孤立グループの方が高い比率だという。
この調査において、連携グループと孤立グループのエンゲージメントに対する回答と強い相関を示していた項目は、仕事を通して得る活力、ありのままの自分でいられること、成長の機会、帰属意識、働きやすい環境などで、上位5項目の内容は両グループで差異はなかった。
ただ孤立グループでは、「会社の一員であることを実感」との相関が最も強かった点、上位10項目までチェックすると連携グループでは抽出されなかった「不安なく自分の意見を言える環境」が含まれていた点が特徴だという。
エンゲージメントのドライバー
従業員の孤立に関して、リモートワークが引き金となって悪化した面もあると推察されるが、逆に今回の調査では孤立グループの方が連携グループより出社勤務をしている回答者の比率が高かった。
これについて調査側は、「出社して単に空間と時間を共有するだけでは、職場における孤立は解消されない可能性が高い」と指摘している。自分の殻に閉じこもって孤立を深めていく従業員については、エンゲージメントやウェルビーイングの低下、業績不振につながる傾向がみられることから、従業員間の連携を維持・強化していくことは企業にとって従来以上に重要な検討テーマになることは間違いないとしている。
連携グループと孤立グループの現在のリモートワーク状況