松岡功の「今週の明言」

JEITA会長が説く「脱炭素化の決め手は『グリーン×デジタル』」

松岡功

2022-01-07 10:57

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏と、IIJ セキュリティ本部セキュリティビジネス推進部長の山口将則氏の発言を紹介する。

「脱炭素化に向けては『グリーン×デジタル』の社会実装が極めて重要だ」
(電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏)

電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏
電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏

 電子情報技術産業協会(JEITA)は先頃、カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素化にデジタル分野が貢献するCO2削減ポテンシャルと2030年までの世界需要見通しを発表した。2021年6月から同協会の会長を務める綱川氏(東芝 代表執行役社長CEO)の冒頭の発言は、その発表会見で、脱炭素化に向けた「グリーン」と「デジタル」の掛け合わせの重要性を説いたものである。

 国内外の政府機関や関連企業、団体の公開情報やヒアリングを基に推計された今回の調査では、デジタル技術によりCO2削減への貢献が期待できる分野として、「電気自動車(EV)・自動運転」「ITリモート」「エネルギーマネジメント」「スマート農林業」「社会インフラモニタリング」の5分野を抽出し、これらを「デジタル5分野」として、脱炭素化に貢献できるインパクトを算出した結果、2030年におけるCO2削減ポテンシャルは55.9億トンとなる見通しだ(図1)。

図1:デジタル5分野のCO2削減ポテンシャル(出典:電子情報技術産業協会)
図1:デジタル5分野のCO2削減ポテンシャル(出典:電子情報技術産業協会)

 この結果は、創電以外の部門の削減目標85.1億トンの66%にあたり、デジタル技術の社会実装がCO2削減に貢献することが定量的に明らかになった。デジタル5分野のうち最大の削減ポテンシャルを有するのは「ITリモート」で、続いて「EV・自動運転」「エネルギーマネジメント」の順となる見込みだ(図2)。

図2:左図はデジタル5分野の2030年CO2削減ポテンシャル内訳と脱炭素化への貢献要素、右図はデジタル5分野の市場規模で見た世界需要額見通し(出典:電子情報技術産業協会)
図2:左図はデジタル5分野の2030年CO2削減ポテンシャル内訳と脱炭素化への貢献要素、右図はデジタル5分野の市場規模で見た世界需要額見通し(出典:電子情報技術産業協会)

 カーボンニュートラルに貢献するデジタル5分野の世界需要額は、2030年には334.9兆円となり、年平均14.4%で成長していく見通し。2030年のITリモートの市場規模は2020年比で約3.7倍となる176.9兆円、EV・自動運転の市場規模は2020年比で約4.2倍となる98.3兆円にそれぞれ成長するとしている。

 なお、デジタル5分野の需要額は日本においても年平均13.9%で成長し、2025年に8.1兆円、2030年には16.3兆円となる見通しだ。

 綱川氏は会見で図2を示しながら、「社会全体で脱炭素化に向けて行動していくためには、『グリーン×デジタル』の社会実装が極めて重要だ。社会実装を見える化する指標として需要額を算出したところ、デジタル5分野でのCO2削減ポテンシャルを最大限生み出すための『グリーン×デジタル』ターゲット市場の2030年の世界需要額は335兆円で、グリーンとデジタルの掛け合わせを社会に実装していくために年平均14.4%増のペースで投資を継続する必要があることが判明した。デジタル技術による社会変革によって、脱炭素化を押し進めることが求められている。IT・エレクトロニクス業界としてはこの期待に応えるべく、取り組みを進めていきたい」と述べた。

 冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。「グリーン×デジタル」というのが、どの産業にとっても2022年の大きなテーマとなりそうだ。

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