本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Gartner バイスプレジデント,アナリストのBob Gill氏と、サイトコア 代表取締役カントリーマネージャーの酒井秀樹氏の発言を紹介する。
「エッジでの機械学習の活用が新たなキラーアプリを生み出す」
(Gartner バイスプレジデント,アナリストのBob Gill氏)
Gartner バイスプレジデント,アナリストのBob Gill氏
ガートナージャパンが12月1〜2日にオンラインで開催した「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」において、米Gartner バイスプレジデント,アナリストを務めるBob Gill(ボブ・ギル)氏が「エッジコンピューティングの戦略的ロードマップ:2022年」と題した講演を行った。同氏の冒頭の発言はその講演の中で語ったものである。
Gill氏はまずエッジコンピューティングのポイントについて、「クラウドコンピューティングを補完する企業の戦略上の要素である」「革新的なアプリケーションとビジネスモデルを実践できる」「分散型の機械学習(ML)によってデータ資産を活用できる」といった点を挙げ、「エッジはクラウドのパワーを一層増大させ、さまざまな用途に対して可能性を広げるものだ」と強調した。
その上で本題であるエッジの戦略的ロードマップについて、まず表1にGartnerの戦略的ロードマップの見方を示し、それに基づいた「2022に向けたロードマップ」の内容を表2に掲げた。従って、表2の内容はGill氏の講演全体を1枚の表に収めたものともいえる。字が小さくて見づらいのはご容赦いただくとして、エッジ活用の今後についてご興味のある方はぜひ内容をチェックしていただきたい。表1の説明にあるように、未来像と現状について挙げた上でそのギャップを分析し、対策についても提案している。
表1:Gartnerの戦略的ロードマップの見方(出典:Gartner)
筆者が表2の未来像で最も注目したのは、下から2番目に記されている「エッジでの機械学習とビデオアナリティクスが基礎的な機能であることが判明する」との項目だ。この意図について説明する段階でGill氏が強調したのが、冒頭の発言である。
表2:エッジコンピューティングの戦略的ロードマップ:2022年(出典:Gartner)
同氏はさらに、「2027年までに、エッジのユースケースの6割以上に機械学習の推論が含まれるようになる」との予測を述べ、「機械学習がエッジで発生する膨大な量のデータを活用したインテリジェンスを大幅に向上させる」と説明した。
その適用例として、同氏は「エッジでのビデオアナリティクス」を挙げ、次のように語った。
「エッジでのビデオアナリティクスは、例えば、製造現場での溶接品質分析や大きな建物に設置されたエスカレーターの異常検知など、多様なエッジアプリケーションの基盤として幅広く展開されるだろう」
果たして、「エッジ×機械学習」によってどんなキラーアプリが生まれるか、注目していきたい。