地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けて、政府が一層注力し始めた。IT企業は地域DXに貢献して住民から信頼されるようになれば、ブランドイメージの向上に直結するのではないか。
「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」に向けて
政府が2021年末に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」における基本戦略の一つに、岸田文雄首相肝いりの「デジタル田園都市国家の実現」がある。デジタル技術を活用し、地域の個性を生かしつつ、都市部に負けない生産性や利便性も兼ね備えることを目的とした取り組みで、本稿ではこれを「地域DX」と表現する。
2021年9月に発足したデジタル庁は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」とのミッションを掲げているが、その成否を分けるのは地域DXが奏功するかどうかにかかっていると筆者は見ている。
したがって、行政の動きは今後も注視していきたいが、それと共にDXを支援する立場にあるIT企業の積極的な取り組みにも大いに注目したい。というのは、地域DXに貢献して住民から広く厚く信頼されるようになれば、企業のブランドイメージの向上に直結するのではないかと考えるからだ。
そうした中で、ここ最近、IT企業で興味深い動きが幾つかあったので、以下に紹介しておこう。
まず、NTT東日本が地域密着型DXコンサルティング企業「NTT DXパートナー」を設立した。詳しくは関連記事をご覧いただくとして、同社では新会社設立の背景と目的について次のように述べている。
「社会を取り巻く環境の変化に対応すべく、企業は従来のIT化にとどまらずDXの必要性に迫られている。こうした背景を踏まえ、NTT東日本ではこれまで培ってきたICT活用のノウハウ、地域社会との深いつながり、豊富なアセットなどを生かし、地域の企業や大学などに対する通信分野にとどまらないDXコンサルティングと、その先のデジタルプラットフォームやシステム実装・推進までを共創・伴走型でワンストップ支援すべく新会社を設立した」
地域DXの推進に向けて、全国津々浦々で事業を行っているNTTグループが動き始めたのが非常に興味深いところである(図1)。
図1:NTT DXパートナーの事業内容(出典:NTT東日本)
次に、日本IBMが「IBM地域DXセンター」を設立した。詳しくは関連記事をご覧いただくとして、同社ではその狙いについて次のように述べている。
「IBM地域DXセンターの展開により、地域の(同社グループ企業などの)メンバーの専門性を生かし、リモートで全国のお客さまのプロジェクトで共創し、先進技術を習得する機会をさらに推進していく。また、地域のDX人材を育成していくため、地域の教育機関と連携し、DXの基礎から実践に必要なスキルなどを学ぶ機会を提供する『地域共創DXワークショップ』を展開する計画だ」
日本IBMにとって地域DXは、全国各地域へさらに事業を広げていく絶好のチャンスである。