海外コメンタリー

週4日勤務制がもたらす生産性向上、その前に立ちはだかる問題

Owen Hughes (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2022-08-31 06:30

 ナレッジワーカーは今後、どのような勤務形態で仕事をしていきたいのかについて、心を決めている。彼らのほとんどは、朝起きてオフィスに向かう生活を週に5日も続けたいとは思っていない。また、オフィスにまったく足を運びたくないという人もいる。

オフィスで語り合う2人の男性
提供:Hinterhaus Productions/Getty

 しかし、仕事の再設計という点で、オフィスのある場所まで足を運ぶというのはパズルの1ピースでしかない。プロフェッショナルらは仕事の場所という点だけではなく、いつという点から議論している。そして、「金曜日は仕事をしたくない」という答えが増えてきている。

 週4日勤務はワークライフバランス、すなわち仕事とオフの調和という点で(ほぼ)等しい、バランスの取れた理想郷を体現しているといえる。勤務日が1日減り、休息とリラックスできる日が1日増えるわけだ。毎週24時間、自由にレジャーを楽しめる時間が増えるのだ。そのことを想像してみてほしい!

 週4日勤務自体は新しい考え方ではない。一部の企業は、何年にもわたってこういった勤務体系に取り組んでおり、そのような企業は通常の週間労働時間をより少ない日数に詰め込んでいる場合もしばしばある。この場合、日々の労働時間が長くなる点と、週4日の出勤(あるいはログイン)との間のトレードオフになる。1日8時間の勤務を5日間続けたいのだろうか、それとも1日10時間の勤務を4日間続けたいのだろうか?筆者は週末に3日の休みがあるというアイデアには好感を持っているが、どちらかの選択肢がもう一方よりもはるかに魅力的であるとは感じていない。

 しかし、こういったトレードオフが今後も続いていくわけではなさそうだ。雇用者側は、勤務時間を削減することでどのように従業員の士気が高まり、幸福感を感じてもらえるようになるのか、そして離職率を下げられるのかについて検討し始めるようになってきている。また人材獲得合戦が、特に技術系やIT系といった専門的職種で激しく繰り広げられている時代において、勤務時間の削減は人材を引きつける上でパワフルなツールになるのは間違いない。ライバルである大企業と同じ水準の給与を支払えない中小企業は、余暇と、ワークライフバランスの良さを報酬とすることで実質的な動機を与えられるはずだ。

 週4日勤務制の試行はおおむね成功を収めている。例えば、日本マイクロソフトは週4日勤務の試行で40%の生産性向上を実現したとしている。また、アイスランドでの4年間にわたる有名な試行も大きな成功を収め、同国の多くの従業員は週4日勤務を要求できるようになっている。さらに、筆者が話を聞いた企業は、週4日勤務制に移行したことで従業員の士気と幸福度が向上したと述べており、学術調査の結果も労働時間の短縮は生産性の低下ではなく、向上につながるということを示している。

 また週4日勤務制は、育児の責任をパートナーと公平に分担しやすくするだけでなく、女性が出産後にフルタイムの雇用を続けていきやすくする結果、男女間の賃金格差が是正され、職場の男女平等を促進する可能性があることも忘れてはいけない。

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