デジタル岡目八目

リコージャパンの木村社長に聞く、デジタルサービス提供への道

田中克己

2022-12-13 07:00

 リコーがOA(オフィスオートメーション)機器からデジタルサービスに事業構造の転換を進めている。国内事業を担うリコージャパン 代表取締役 社長執行役員の木村和広氏は「主軸の複合機(MFP)やプリントアウトサービスはペーパーレス化で大きく伸びるものではない」と、その理由を説明する。そこで、ハードウェアやソフトウェアの単品販売から顧客の課題を解決するソリューションやサービスの提供に事業領域を広げるとともに、社内の体質転換を図っている。国内外での売り上げが伸び悩む中で、同社のデジタルサービス提供への道を探ってみる。

 リコージャパンは、約1万2000人の営業担当者と約1300人のシステムエンジニア(SE)を抱え、中堅中小企業にMFPやプリンター、PCなどを販売する。2021年度の売上規模は約6300億円になる。同社の強みは、国内約350拠点に販売網と保守網を整備していること。オービックビジネスコンサルタント(OBC)やピー・シー・エー(PCA)の会計ソフトの販売では、国内トップだという。だが、「業種や業務の課題を解決するソリューションを提供してほしい」(木村氏)という顧客の声に、ハードウェアやソフトウェアの単品販売では応えられなくなってきた。顧客の業務を理解しているのかが問われていた。

 そこで、2017年度下期に中小企業向けの業務業種パッケージ「スクラムパッケージ」、2019年度に同じく課題適応型ソリューション「スクラムアセット」を投入する。これらは、ハードウェアとソフトウェア、サービスを組み合わせたもので、いわばデジタルサービスの象徴的な商品になる。

 スクラムパッケージは「建設」「不動産」「製造」「福祉・介護」「医療」「運輸」「観光」「印刷」「流通」の9業種と、「働き方改革」「セキュリティ」「バックオフィス」の3業務に向けて154種類のモデルを用意する。営業担当者が売り込むための説明資料と提案書、ツールなどをセットにし、3回の訪問で成約できる営業効率の優れた販売モデルだという。約50人のプロデューサーがモデル開発を担っている。

 スクラムパッケージの責任者を務めるICT事業本部 RDPS企画センター長の岡田泰氏は、特に法改正に伴う課題解決型のモデル開発に力を入れているという。例えば、働き方改革法案の成立に伴って勤怠管理ソリューションを用意したり、運転手のアルコールチェック義務化にはアルコール検知器やデータ管理ソフトなどを組み合わせたソリューションを用意したりといった具合だ。電子帳簿保存法やインボイス制度、脱ハンコに対応した契約書の審査・管理に対応するなど、旬なテーマもそろえる。コロナ禍ではリモートワークの環境整備にも取り組んだ。いずれも短時間でのキャッチアップが求められる。

 一方、スクラムアセットは、これまで同社はオフィスコンピューター(オフコン)などで個別に対応してきたシステム構築をソリューションモデルに仕立てたもの。執行役員 ICT事業本部 副本部長 兼 インテグレーション統括本部長の服部伸吾氏によると、リコー製オフコンやIBM製オフコンと、それら向けの商材を複数扱ってきたが、多くが個別対応で生産性があまり高くなかったという。

 そこで、プロデューサー約20人を配置し、「働き方改革」「セキュリティ強化」「バックオフィスの効率化」「業種業務」の4つの経営課題に沿って、83種類ほどのアセットモデルをそろえた。学習教材と顧客への配布資料、提案書なども用意した。ドキュメントなどの成果物をそろえて品質の均一化を図る。2022年に入ってサイボウズと提携し、同社のノーコード開発ツール「kintone」を取り込み、顧客の内製化に応える。「業務を知っている人がアプリを作れるように支援する」(服部氏)

 木村氏は「営業も勉強しないと売れない(時代だ)。ユーザーも商品の話を聞いてくれない」とし、顧客の課題を聞くことの重要性を指摘する。そのためにも、業種知識をはじめとするスキル向上を図り、プロデューサーが用意した営業向けの資料を持って、顧客企業のだれに、どんな話をして、いかにソリューションを提案すればいいかを示す。

 約100万事業所に及ぶ顧客の購買や面談に関する情報をデータベース化し、活用できるにしていることに加えて、ビジネス知識やテクノロジー、デジタル戦略、デザイン思考、コミュニケーション、チームビルティングなど、社内に3400本超の教育コンテンツを充実させ、それを体系化した上で顧客に提供することを考えている。例えば、中小企業がセキュリティ対策の課題と解決策を学べるようにするコンテンツを2023年度前半に提供できるよう準備している。

 スクラムシリーズの売り上げは800億円弱になる。木村氏は「早く4桁にしたい」と市場開拓の強化に向けた新たな戦略を練っている。1万2000人の営業担当者と1300人のSEらを生かし、年率10%超で伸ばせば目標は達成できる。営業が売りやすく、かつ顧客が求めるモデルの品ぞろえにかかっている。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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