「プロセスマイニングを再発明する」Celonis、プロセス管理実行基盤に新機能

阿久津良和

2022-12-22 08:00

 Celonis(セロニス)は12月21日、ドイツ・ミュンヘンで11月に開催した年次カンファレンス「Celosphere 2022」の概要と、2022年の国内ビジネスを総括する説明会を開催した。

 代表取締役社長 村瀬将思(むらせ・まさし)氏は同社の姿勢について、「プロセスマイニングを再発明する。X-Ray(X線)からMRI(核磁気共鳴画像法)に移行すれば、新たな観点でのプロセスマイニングが可能」だと強調した。また、2022年のビジネスは堅調で2023年も「この1年で分かったのは(プロセスマイニング市場が)ドル箱。各社もプロセスマイニングに取り組んでいるが、ホワイトスペースが多く、我々だけでアプローチするのは不可能。戦略的にパートナー企業を増やしていく」と述べている。

「プロセスマイニングはオブジェクトの概念で表現すべき」

 プロセスマイニングは、ドイツ本社のチーフサイエンティストであるWil van der Aalst(ヴィル・ファン・デル・アールスト)氏が提唱した、各種ログに基づいてビジネス工程の分析を支援する技術である。Celonisはプロセスマイニング技術で自動的に非効率化を排除する、プロセス管理実行プラットフォーム「Celonis Execution Management System(EMS)」を提供しているが、Celosphere 2022では複数の新機能を発表した。

 Aalst氏は自著や論文で「プロセスインテリジェンスは、ビジネスオペレーションのあらゆる観点に組み込まれる必要がある。プロセスマイニングはプロセスを個別で見るのではなく、オブジェクトの概念で表現」すべきだと述べている。

Celonis 代表取締役社長 村瀬将思氏
Celonis 代表取締役社長 村瀬将思氏

 村瀬氏は「今後は受注や購買、生産と個別に見るのではなく、(製品・サービスの)客体として表現されるはず。なぜなら、現実社会は多くのプロセスで業務が実現している。(今後はAaist氏が2019年に提唱した)Object-Centric Process Mining(オブジェクト中心のプロセスマイニング)なら部門間で包括的な観点の示唆を得られるだろう」と解説しながら、国内企業でありがちな部門レベルの最適化ではなく、経営層が発する中期経営計画に沿った全体最適が可能になると主張した。

 新機能の一つ目は「Celonis Process Sphere」。ビジネスの工程をオブジェクトとして捉え、各オブジェクト間をつなげると工程の無駄を可視化する機能だ。

 Process Sphereについて村瀬氏は「従来は2次元で確認していたプロセスと多角化に確認して、(ビジネスの遅延要因などを)可視化する世界観をプロセスマイニング技術で実現した」と解説した。

Process Sphereの概要 Process Sphereの概要
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 二つ目の「Celonis Business Miner」はユーザー部門でも、プロセスマイニングデータを確認する機能である。「プロセスを理解するエンジニアではなく、テクノロジーでビジネスを改善する意思を持った方々の全社的な改善活動」(村瀬氏)に役立つという。

 一見するとビジネスインテリジェンス(BI)の一種に見えるが、各部門で蓄積したデータを取り込み、Q&A形式の質問で必要なデータを表示できる。新人研修機能で誰でも使用可能であり、洞察を得た従業員は社内のコミュニケーションや共同作業にも活用でき、ビジネスアイデアの創出にもつながると解説していた。

Business Minerの概要 Business Minerの概要
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 最後の「Celonis Workforce Productivity」は熟練工の端末操作を記録し、操作を可視化。その結果を「モデル化してベストプラクティスを若い従業員に提示する」(村瀬氏)機能だ。クリックした回数などを記録し、各部門間でデータを活用できるという。一連の新機能はベータ版として提供し、本番稼働は2023年を予定している。

Workforce Productivityの概要 Workforce Productivityの概要
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 2022年のビジネス進捗については「執行役級の方々に腰を上げていただくための『Celonisエグゼクティブ情報交換会』を組成。ユーザーに対しても情報交換や利用技術の向上を目指した『Celonisユーザー会』、部長級の方々にCelonisソリューションを理解してもらうための『Celonis Champion Club』の活動も2022年中に実施した」(村瀬氏)

 パナソニックホールディングスやNIPPON EXPRESSホールディングス、エイト日本技術開発が導入しており、パートナー企業も増加中だ。具体的数字は示さなかったものの、新規契約・追加契約は前年比5倍、年間経常収益は前年比3倍を達成したという。村瀬氏は「私の中でキャリアハイだった」と2022年を振り返った。

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