IHIと日本IBM、北九州市は1月18日、北九州地域のグリーントランスフォーメーション(GX)の推進を目的とした連携協定を締結した。同日には記者説明会が行われ3者が進める熱マネジメントプロジェクト「HaaS(Heat as a Service)プロジェクト」について説明があった。
左からIHI 常務執行役員 産業システム・汎用機械事業領域長 茂垣康弘氏、北九州市長 武内和久氏、日本IBM 取締役副社長執行役員 IBMコンサルティング事業本部長 加藤洋氏
北九州市は環境先進都市として、2022年2月に策定した「グリーン成長戦略」に基づき、2050年ゼロカーボンシティーの実現に向けて産官学による戦略を推進している。これに関連して、グリーンとテクノロジーの掛け合わせによる、新たな産業の創出や企業の競争力強化につながる脱炭素化の実現に向けたイノベーションを創出するため、産官学金による「北九州GX推進コンソーシアム」を2023年12月に設立した。
今回の連携協定で3者は、国内の民生・産業部門で消費されるエネルギーの約6割を占める「熱エネルギー」の脱炭素化による二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた、先進的な実証を実施する。北九州市長の武内和久氏によると、煙突などから高温のまま流れていってしまう熱エネルギーは過半数を占めているという。
消費されるエネルギーの約6割が熱需要である一方、一次エネルギーの約6割が廃熱として有効利用されていない
これらの熱エネルギーを有効活用し、都市ガスなどの利用を減らしてCO2の削減につなげることが連携協定の目的だ。今後、北九州市の事業者や学術研究機関と連携した地域内でのエネルギー融通の仕組み構築に向けた検討を進める予定だとしている。
それぞれの強みや役割を持ち寄り同プロジェクトを進める。武内氏は、「IHIには製造業のノウハウを基に実証・事業化をリードしてもらい、日本IBMにはデジタルソリューションの開発、そして新規事業の創出といった強みを持っている。北九州市は、実証に参画を希望する企業を掘り起こしたり、学術研究機関とのマッチングを行ったりと、それぞれの強みを生かした3本の矢でプロジェクトを進めていく」と説明した。
同プロジェクトは、熱エネルギーの状況を可視化し、最適化するとともに、企業や地域間で熱エネルギーを融通することで、熱のマネジメント「HaaS」を進めていく。また連携協定の中では、これらのプロジェクトを踏まえて「北九州モデル」の創出を目指すため、地域GXの推進、HaaSを進めるための実証・事業化、これらを支えるGX人材の育成を連携協定項目に盛り込んでいる。
連携協定の項目内容
同市での事業拡大に伴い、IHIは熱エネルギー事業の拠点の展開、日本IBMには「IBM九州DXセンター」の拡大・機能強化、そして地元企業の熱エネルギー分野への参入といった経済的な波及効果を期待しているとしている。
日本IBMが2022年11月に日本IBM北九州事業所内に開設した九州DXセンターは、地域の企業や大学と産官学で共創する拠点となっている。2024年の夏には「BIZIA KOKURA」に新オフィスを開設するなど拠点の拡大を図り、DX/GX推進や新たな価値の創出、DX人材育成を通して地域から日本経済に貢献するとしている。
IHI 常務執行役員 産業システム・汎用機械事業領域長の茂垣康弘氏は、HaaSの実証を重ねながらビジネスに展開し、2030年には数百億円規模のビジネスを目指すという。既に2023年の下半期に、熱を多く利用し、省エネやカーボンニュートラルの実現に困難を感じる事業者に対してアンケートやヒアリングを実施。その中で、化学製品業や金属加工業など事業者6者に対して工場・企業内の熱利用の最適化サービスの実証を行っている。
HaaSのビジネス展開