松岡功の一言もの申す

業務の自動化が進むAI時代に人は創造的な仕事へシフトしていけるのか

松岡功

2024-06-13 10:52

 AIによって業務の自動化が進めば、人手不足の問題が緩和される一方で、仕事を奪われる人も出てくる。ならば、人はもっと創造的な仕事へシフトしていけばよい――AIと人の関係を巡ってはこんな論調が主流になりつつある気がするが、本当に誰もが創造的な仕事へシフトしていけるのか。現実はそんなに甘くないのではないか。今回はこの点について、この分野に関連する最新の調査結果を機に考察したい。

3年後にはほぼ全ての企業が財務報告にAIを使用

 この分野に関連する最新の調査結果とは、KPMGインターナショナルが先頃発表したレポート「AIを用いたこれからの財務報告と監査」のことだ。主要10カ国の1800社の財務担当役員を対象として2024年2~3月に調査を実施したものである。

 それによると、既に4分の3(72%)の企業が財務報告プロセスにおいてAIを試験的に導入または使用しており、この割合は3年後ほぼ全世界的なレベル(99%)に拡大する見通しであることが明らかになった。

 また、「財務部門の責任者は、AIを活用して監査の品質向上や予防的な監査プロセスの開発、データ分析の強化を企業の財務報告体制に組み込むことを期待している」ことや、「AIの導入により、効率的かつ効果的な財務報告体制や経理体制を作ることができ、リスク識別と異常検出の精度が向上し、意思決定の改善が期待できる」ことも浮き彫りになった(図1)。

図1:調査レポートのサマリー(出典:KPMGインターナショナル「AIを用いたこれからの財務報告と監査」)
図1:調査レポートのサマリー(出典:KPMGインターナショナル「AIを用いたこれからの財務報告と監査」)

 財務報告にAIを導入するメリットについては、「トレンドと影響の予測能力が高まった」「リアルタイムでのリスク洞察が可能になった」「データに基づく意思決定の改善」「データの正確性の向上」といった点が挙がった。同時に、AIの使用は財務報告チームの生産性向上と、人材獲得およびスキル開発の向上にもつながっている。既に10社中4社以上が従業員の生産性と効率が向上したと報告しており、3年後にはその割合が10社中6社にまで拡大すると見られている。

 この調査結果について、KPMGインターナショナルでグローバル監査責任者を務めるLarry Bradley(ラリー・ブラッドリー)氏は、「AIは既に企業のシステム、プロセス、統制、財務報告に関するガバナンスなど企業の運営方法に多大な影響を及ぼしており、今後数年で劇的に加速するだろう。私たちはデジタル時代を終え、AI時代に突入しようとしている」とのコメントを寄せている。

 筆者がこのレポートで注目したのは、「3年後にはほぼ全ての企業が財務報告にAIを使用する」との結果だ。驚きというより「やはりそうか」という印象だ。

 AIによる業務の自動化については、本連載でも2024年2月29日掲載記事「生成AIで業務の4割が自動化される可能性も--アクセンチュアの推測を考察する」でも取り上げた。ポイントとなるところを挙げておくと、「アクセンチュアの調査から、生成AIが今後、業種や業務にどのようなインパクトをもたらすかを分析したところ、現存する業務の40%が自動化されるなど大きな影響を受ける可能性があることが分かった」、さらに「例えば、金融業は4割どころか、7割近くの業務が自動化される可能性がある」との推測も明らかにした。同記事では、アクセンチュアによる各業種の業務自動化率の予測もグラフで示しているのでご参照いただきたい。

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