SAPは米国時間1月9日、全米小売業協会(NRF)主催のイベント「NRF 2025: Retail's Big Show」において、小売業向けの新ソリューションと機能を複数発表した。
同社は最大のニュースとして、小売業、ファッション業界、垂直型ビジネスに特化したクラウド(統合基幹業務)ERPソリューション「SAP S/4HANA Cloud Public Edition, retail, fashion, and vertical business」を一般提供すると発表した。同ソリューションについてSAPは、世界中のあらゆる規模の小売業者に合わせてカスタマイズ可能なERP機能を提供する点において、重要なマイルストーンであると説明する。
同ソリューションについて、SAPでコマース・消費財産業担当シニアバイスプレジデント 兼 グローバルヘッドを務めるBalaji Balasubramanian(バラジ・バラスブラマニアン)氏は「小売企業がパーソナライズされた体験を提供するには、マーチャンダイジング、店舗業務、サプライチェーンの複雑性に対応した小売業界固有のプロセスと機能を備えたERPシステムが必要である」と述べる。汎用的なERPシステムでは、小売業におけるプロセスの一元管理が難しく、消費者の期待に応えるための柔軟性が不十分だという。
こうした課題に対応するためSAPは、パブリッククラウドアーキテクチャーの柔軟性を活用しながら、業界固有のプロセス、データ、AIを統合し、すぐに使える統合機能を搭載したソリューションを提供する。プロセスを合理化し、顧客体験(CX)を向上させ、持続可能な成長を促進するように設計された機能群も提供する。新しいプラットフォームでは、統合された業務データとすぐに使えるAIにより、財務、調達・購買、マーチャンダイジングの統合管理を実現する。
データ主導のパーソナライゼーションが特徴のソリューション
SAPは、小売業者と消費財メーカー向けのロイヤリティー管理ソリューションも発表した。同ソリューションは、2025年後半にリリース予定である。
SAP Emarsysが実施した調査によると、米国消費者の5人中4人(83%)は、よく利用しているブランドから過小評価されていると感じており、他ブランドへの乗り換えも視野に入れていると分かったという。このロイヤリティー管理ソリューションでは、「SAP Commerce Cloud」「SAP Service Cloud」「SAP Emarsys」、S/4HANA Cloud Public Edition, retail, fashion, and vertical businessといった各ソリューションとの統合を通して、一連のCX向上と消費者の好みに基づいたリアルタイムのオファーを手助けし、ロイヤリティーの獲得を支援する。
ロイヤリティー管理ソリューションの主な特徴は以下のとおり。
- 購買客をクラウドベースのロイヤルティーウォレットと連携させるロイヤルティープロファイルにより、ターゲティング/パーソナライズされたオファーや特典の提供、リアルタイムのバスケット分析を実現する
- 複数ブランドのロイヤルティー管理やパートナー企業とのロイヤルティープログラム共有により、地域や市場を横断してロイヤルティープログラムを一元管理し、市場シェアの拡大に向けたブランドプログラムの統合を可能にする
- リアルタイムのポイント交換が可能なオムニチャネルプロモーション計画を一元的に行える場となる。チャネルの種類に関係なく、あらゆるタイプのオファー、キャッシュレス決済、ギフトを消費者に提供する
- パーソナライズされた購買体験、マーケティング、サービス、小売業者とのやりとりを通して、チャネル横断の一貫したCXの設計を可能にする
- プロモーションの実績とロイヤリティー関連の負債を追跡する指標、財務システムとの連携による投資収益率(ROI)の測定、メンバー/パートナーブランドとのポイントや特典の精算を実現する
オンラインショッピングをかつてなく簡単にするAI
加えてSAPは、2025年前半にAIショッピングアシスタントを一般提供すると発表した。同アシスタントは「SAP CX AI Toolkit」で提供され、Commerce Cloudにおける既存のAI機能を拡張する。オンラインでの購買体験に変革をもたらす同アシスタントにより、消費者は自然言語での会話を通して、必要なものをすぐに見つけられるようになるとアピールしている。