日本オラクルは12月12日、米Oracle Corporationスタンダードストラテジー&アーキテクチャ担当バイスプレジデントであるDonald Deutsch氏の来日に伴い、同社の標準化に対する戦略について紹介するプレス向けの説明会を開催した。
Oracleは、2005年9月にサンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld San Francisco 2005」(OOW 2005)において、標準化に注力していくことを表明している。標準化へのコミットは、同社のCEO(最高経営責任者)、Larry Ellison氏がOOW 2005の基調講演で明らかにしたものだ。
Ellison氏は基調講演の中で、、「標準化はOracleの歴史そのものだ。Oracleは、25年前に最初の商用リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)を開発したときからSQL言語という業界標準を採用していた。そのころの競争相手はプロプラエタリな言語を使ったデータベースを提供する会社だった」と話している。
現在では、SQL言語をサポートしていないRDBMSは主流とは言えないことが、標準化に対するEllison氏の自信にもなっている。
今回のOOW 2005で、同社が標準化を見直すきっかけとなったのは、今後同社の主力製品の1つとなるミドルウェア製品「Oracle Fusion Middleware(OFM)」において、他社のミドルウェア製品との相互運用性を確立する“ホット・プラガブル”構想の実現を目指しているためだ。
- 米Oracle スタンダードストラテジー&アーキテクチャ担当バイスプレジデント、Donald Deutsch氏
来日したDeutsch氏は、「SQL言語は、この20年間で最も成功した標準化の1つ。Oracleの成功をもたらした要因の1つとも言える。標準化は、われわれにとって新しい取り組みではなく、最初から組み込まれたDNAのようなものだ」と話す。
同氏は、25年以上にわたりRDBMSに搭載される標準化の策定に取り組んでおり、INCITS(InterNational Committee for Information Standards)において「H2 Technical Committee on Database」の議長を務めている。また、Oracleの代表として、INCITSの執行理事会、Java Community Processの執行委員会、ANSI(American National Standards Institute)の理事会など、さまざまな団体に関わっている。
こうしたIT業界における標準化は、当初は米国を中心に策定されていた。しかし、あらゆる産業にITが不可欠となった現状では、欧州や日本を含むアジアなどの市場にあわせた標準化を取り入れることも重要になる。「特に、インドや中国などが標準化にとって大きなポイントになる」とDeutsch氏。
同氏は、「Oracleもすでに多くの売り上げを米国以外から上げている。グローバルにビジネスを展開する企業にとって標準化への取り組みは不可欠であり、標準化は大きな差別化の要因にもなりうる」と話している。
Oracleは、すでに単なるRDBMSベンダーではなく、アプリケーションサーバをはじめとするインフラ製品をはじめ、CRMやERPなど完全に統合されたウェブ対応のアプリケーション製品、統合開発環境など、さまざまな製品をグローバルに展開していることから、グローバルな業界標準への準拠は今後ますます重要な課題の1つといえる。
日本オラクルの標準化に対する取り組みについて、同社システム事業推進本部 スタンダードストラテジー&アーキテクチャ担当の鈴木俊宏氏は、「標準化活動における日米間のギャップを埋めることが最大の目的。欧米の標準化活動を国内に展開することはもちろん、日本の標準化活動に参画し、その成果を欧米に展開していくことが重要になる」と話す。
「米国に比べ、地理的に制約の少ない日本は標準化のための相互運用テストをやりやすい環境にある。すでに、DOPGにおけるWebサービス相互接続検証や業界別XMLスキーマ動作検証など、標準化と実装のギャップを埋めるさまざまな取り組みを行っている。日本は、標準化の“銀座商店街”といえるだろう」と話している。
- 日本オラクル 執行役員 システム事業統括 システム事業推進本部長、三澤智光氏
また日本オラクルの執行役員 システム事業統括 システム事業推進本部長である三澤智光氏は、「グローバルな標準化活動において、日本も大きな一票、および発言権を持っている。恥ずかしくない一票、そしてオラクルとしての一票を投じるためにも標準化への取り組みは今後も重要になる」と話している。