Salesforce.comは10月9日、米国サンフランシスコにて「Dreamforce '06」を開幕した。約5000人の参加者を前に基調公演を行った同社 会長 兼 CEOのMarc Benioff氏は、Salesforceの提供するプラットフォーム上でアプリケーションを開発する際に利用できる開発言語「Apex」を発表した。
Apexは、Salesforceのオンデマンドプラットフォーム上で動作するプログラムを開発するための言語。さまざまなアプリケーションをマッシュアップして組み合わせるツールとしては、すでに1年前のDreamforceにて「AppExchange」が発表されていたが、Apexはより自由にSalesforce上でアプリケーションを開発するための言語となる。
「ユーザーは、Salesforceのアプリケーションに直接自分のコードを書き加えたい、Salesforceのエンジニアと同じように自由度を持ってオンデマンドアプリケーションの開発を進めたいと考えている。Apexを使えば、例えばSalesforceのアプリケーションで特定のボタンをクリックした時に特定の動作をするようカスタマイズするといった小さな機能の変更はもちろん、複雑なトランザクションを必要とする大規模なアプリケーションを開発することもできる」(Benioff氏)
Apexでは、アプリケーションの開発や運営のためにデータセンターやOSといったインフラを用意する必要はなく、ウェブ上ですべての開発が行える。そのためエンジニアは、開発の中核部分のみに注力できる。Apexで開発されたアプリケーションは、AppExchange上で公開することも可能だ。
オンデマンドCRM最新バージョン「Winter '07」
基調講演にてBenioff氏は、同社の提供するオンデマンド型CRMの最新バージョンとなる「Winter '07」も発表した。21回目のアップデートとなる最新バージョンには、さまざまな機能が追加されている。
まずCRMやSFAの分野で強化された点としては、アプリケーション全体がAjax対応となり、カレンダーにポップアップリマインダが表示されるようになったことや、ワークフローや承認プロセスがルール付けによって自動化できること、「Lotus Notes」に対応したことなどだ。
サービスおよびサポート分野に向けては、新たにコールセンター版が登場した。Cisco SystemsやNortel Networks、Avayaなどのコールセンター製品に対応したこのコールセンター版では、カスタマーサービスにかかってきた電話番号から顧客情報が表示され、その顧客が利用しているIT環境やサポートレベル、過去のサポート内容などが瞬時に参照できる。
マーケティング関連では、Googleのオンライン広告「Adwords」と統合された「Salesforce for Google Adwords」が用意されている。キーワードの購入や広告文の編集、Adwordsに費やす予算や売上の管理など、Adwordsに関するさまざまな管理がSalesforce上で可能となる。
また、Salesforceの機能追加ロードマップを公開し、ユーザーがその機能についての意見を投票するフォーラム「IdeaExchange」も提供する。このフォーラムでは、Salesforceがユーザーの意見を集め、追加する可能性のある機能をリスト化し、公開する。ユーザーはその機能に対して投票を行い、票が多ければロードマップの優先順位も高くなる。
もちろん、こうして公開された機能をユーザー自らが開発したい場合は、Apexを利用して開発することも可能だ。Salesforce.comのCOO、Phill Robinson氏は「MicrosoftやOracleにも多くの開発者がいるが、社内のリソースにはどうしても限りがある。Apexを提供することで、Salesforceのユーザーすべてが開発者となることができ、イノベーションの加速につながる」としている。
Benioff氏は、「リサーチ会社のGartnerは、2011年までにビジネスソフトウェアの25%はSaaSモデルになると予測している。投資銀行のTripleTreeはより強気な見方をしており、2009年にSaaSはソフトウェア全体の40%にまで成長すると見ている。その中で、今こそがApexを提供するのに最適な時期だと考えている」と述べた。