既報の通り、Oracleは24日、Asia Pasific地域(APAC)にある19の開発とソリューション・センターを連動させたR&Dネットワークを発表している。さらに、30日には上海に新しいR&Dセンターを設立、これもR&Dネットワークに組み込まれる。ここでは組み込み技術やユビキタスコンピューティング、ソーシャルネットワーキング、位置空間イメージング、仮想化といった先進技術が研究されることとなる。なぜこういった先進技術をAPACに作るのか、その役割は何か、Oracle OpenWorld Asia Pacific 2007の会場において、Oracle Asia R&D Cetnersでバイスプレジデントを務めるPascal Sero氏に話を聞く機会を得た。
まず同氏は「R&Dネットワークを構築し、各国で行われるの研究を同じ土俵で共有することが目的」と説明する。ネットワークを構築する各エリアのセンターには、マーケットの特性などによって一定の役割が与えられる。例えば韓国や日本では携帯電話サービスが進んでいるのでモバイルの研究を進める、といった具合だ。
こうして特定エリアにおける”先進国”の研究成果および顧客やパートナーからのフィードバックがネットワークで共有されることになる。これによって”車輪の再発明”を防ぐ効果がある。
しかし、同氏はさらに大きな意味合いを語る。「R&Dネットワークの持つ大きな意味として文化の多様性を挙げることができる。Oracleの製品は北米において開発されているが、APACでの研究はこうした単一の文化からは生み出すことのできない多様な成果を得ることができる。私自身最初は欧州、次に北米、そして現在はアジアを拠点に働いているが、その違いは大変に興味深い」とする。
例えばWeb 2.0のマーケットはAPACより北米が進んでいる。しかし、この研究をAPACで行うのも北米とは異なる視点が欲しいからということだ。
さらに、「こうした多様性に現地で直接触れることが重要だ。顧客やパートナーのフォードバックを得るには実際にその地で働き生活し、文化に触れる必要がある」とする。もちろん、Oracleとして、無視できない巨大なアジアマーケットの声に触れたいという狙いもあるだろう。
多様な文化、多様なマーケット、多様なパートナーから生まれる多様な視点から生まれる成果に期待しているというわけだ。こうして生み出された成果はもちろん、Oracleの製品に、現在ある製品に機能を加えたり、将来の方向性の参考にしたりといった様々な形でフィードバックされる。
一方でOracleとしてはこうした多様性を受け入れる基盤を構築する必要がある。同氏は「Oracleの製品が標準ベースであることで多様性を受け入れることができる。R&Dネットワークの研究も全て標準に則りながら進められるものだ」とする。
例えば、OracleのERP製品であるE-Business Suite(EBS)はXMLベースの財務諸表標準規格であるXBRLに対応している。XBRLへの対応は中国のR&Dセンターと連携しながらまず日本で進められ、最終的に米国で製品へと組み込まれてる。ここの対応はEBSがXMLによるレポーティングに対応していることが実現の鍵になっている。
こうした連携を進める上で、同氏は「インターネット越しのネットワークが大変役立っている」とする。R&Dネットワークへ参加しているのは多様な文化を持っている人々―つまり、言語も異なり時差もある。電話越しの会議などではうまくいかない。そこで同社自身、Web 2.0の成果であるWikiやBlogを活用している。