前回は、プロジェクトを初めて任されたAくんが、プロジェクト着手に至るまでの心理状態の変化を通して、未知の状態からプロジェクトの全体像を描き出すまでの試行錯誤のプロセスを紹介した。今回は、そのプロジェクトを成功に導くために不可欠となる、最も重要なポイントを解説しよう。
プロジェクトには、言われたことを指示通りに行う定型的な業務とは決定的に違う点が1つある。それは、プロジェクトには「特定の目的がある」ということだ。そして、プロジェクトを任された時点では、その目的が明確に定義されているわけではない。「最初に目的ありき」のプロジェクトも、現実にはその目的そのものを見極めることから始めなければならない。
A君は、プロジェクトの実行責任者を任されたが、そもそもこのプロジェクトの本当の責任者(オーナー)は誰だろうか? そして、このプロジェクトの実施や成果によって影響を受ける様々な利害関係者(ステークホルダー)は誰なのだろうか? さらに、自社がこのイベントに参加する本当の狙いは何だろうか? 実施にあたっては、何をゴールとすべきなのだろうか?
そうした重要な事柄が何も決まっていない……。それが多くの企業で見られるプロジェクトの一般的なスタート地点だといってもよい。これらをあやふやにしたままプロジェクトを進めると、いずれプロジェクトの周辺は様々な情報で溢れかえり、状況は日増しに混沌としてくる。
不明瞭な目的やゴール、責任者の不在は、プロジェクトを迷走させ、大量に押し寄せる情報を選択不能な状態へと導く。やがてプロジェクトは、無駄な情報、無駄な活動、そして意味のないコミュニケーションで埋め尽くされる。
そうした事態を避けるためにも、まずは「目的を見極める」ことが大切だ。さらにプロジェクトマネージャーは、あらゆる状況に常に冷静に対処できるようにしておく必要がある。そのためには、日々の情報ストレスから解放され、常に頭をスッキリさせておくよう心がけておくことが大切だ。