前回は、プロジェクトの進行過程で生まれる大量の情報に、いかに効率よくアクセスし、活用していくかといった「情報マネジメント」のテクニックについて様々な視点から解説した。
今回は、プロジェクト活動の最新状況をいかに「見える化」するか? といった「プロジェクトマネジメント」、および、プロジェクトの様々な経験からいかに学び次の活動に生かすか? といった「ナレッジマネジメント」に対する取り組み方について紹介しながら、スマートなプロジェクト管理の本質をまとめ、本連載を締めくくろう。
まずは20年以上に渡ってITプロジェクトの現場を最前線で経験した筆者が、実際に肌で感じてきた「プロジェクトマネジメント」に関する持論を述べさせていただきたい。
近年、プロジェクトマネジメントの理論や資格制度は充実してきたが、それらが現場サイドで有効に機能しているとはまだまだ言い難い。
プロジェクトマネージャーは確かに重要な役割ではあるが、プロジェクトを実際に動かすのは現場で働くプロジェクトチームのメンバーたちである。にも関わらず、プロジェクトに関わるメンバーには、必ずしもプロジェクトに対応するための適切な教育やツールが与えられているわけではない。結局のところ、各自が日常のルーチンワークと変らない自己流の仕事のやり方をしているのが現実ではないだろうか?
私は常々、プロジェクトにはプロジェクトにふさわしい仕事のやり方があると思っている。マネジメントのレベルで、プロジェクトマネジメントスキルを習得することも大切だが、それ以上にチームレベルでの仕事のやり方を改善する必要があると考えている。
そのためには、いかにして円滑なコミュニケーション環境を築くかといった視点が重要となる。
私は、プロジェクトマネジメントの方法論より前に、こういったコミュニケーション環境をどう築くかといった点の方が大切だと思う。なぜなら、プロジェクトを適切にマネジメントするためには、一人ひとりがバラバラではなく、チームとして行動し、情報の意味を共有する必要があるからだ。その土台なくして、むやみにプロジェクトマネジメントの方法論を振りかざしたところで、多様な人間関係を円滑にコントロールすることはできないはずだ。プロジェクト関係者の様々なアイデアや活動がどのように関わりあって、大きな「完成図」を描いているのかといった理解と共通認識の醸成が不可欠なのだ。
私は、そういう意味でプロジェクトにおける地図(マップ)をチームで共有することのメリットは非常に大きいと考えている。