一方で、市場の状況が変わり始めたのは2002年ごろからだ。国内の年商5億円以上500億円未満の民間企業を対象にしたノーク・リサーチの2002年の調査では、Lotus Notes/Dominoが44.2%、サイボウズが19.9%、Microsoft Exchangeが16.9%と、Lotus Notes/Dominoは相変わらず高いシェアを堅持したものの、今後の導入予定ではLotus Notes/Dominoが36.8%であるのに対し、サイボウズが31.6%と肉薄。年商の低い企業にサイボウズ支持が広がっていることが明らかになった。
2007年にはとうとう形勢が逆転、国内トップの座をサイボウズに明け渡した。ノーク・リサーチによる国内の年商5億円以上1000億円未満の民間企業を対象にしたアプリケーションの利用実態調査によると、サイボウズOffice/ガルーンが25.6%、Lotus Notes/Dominoが24.7%、Microsoft Exchangeが13.1%、desknet'sが10.0%となっている。また、今後の利用予定ではサイボウズ Office/ガルーンが31.4%となり、Lotus Notes/Domino(16.8%)とMicrosoft Exchange(16.4%)を大きく引き離した。
シェアを落とした最大の理由
新バージョンの出荷やサポートの終了など、節目節目で繰り返されてきている議論ではあるが、ここでLotus Notes/Dominoが圧倒的な支持を集め、そしてシェアを落とした理由について述べておきたい。
ご存じのように、日本の先進的なユーザーがLotus Notesを導入したのは1990年代前半のことだ。当時、文書のような非定型情報を扱う機能を備えたアプリケーションがLotus Notes以外になかったこと。またナローバンド回線しか選べなかった時代にあっては、PCサーバを分散配置し、クラスタ構成でスケールアップしていけることが、企業にとって十分な選択理由のひとつになった。
こうした背景から、Lotus Notesは多くの企業に選ばれ、長く利用されてきた。Lotus Notesは、メールとファイル共有によるコミュニケーションの定着と、EUC(エンドユーザーコンピューティング)による各部署の情報共有基盤の確立に、多大な貢献を果たしたと言えるだろう。
一方、インターネット/イントラネットの普及、ブロードバンド化の流れが、Lotus Notesの足元を揺さぶった。端末側にリッチな専用クライアントソフトを持つアーキテクチャは、基幹系システムのウェブ化が進む中、運用面でもコスト面でも負荷が高いように感じられてきた。
さらには、EUCで各部署のユーザーがデータベース開発を進めたことで、情報共有基盤が部分最適化してしまったことも裏目に出た。業務別、目的別にデータベースが立てられ、使いこまれるに従ってデータベースは乱立状態になっていく。数千ものデータベースが知らぬ間に立てられ、その管理に頭を抱える企業も増えてきた。情報がデータベース化されていても、必要な情報が必要な時に見つけ出せないのでは意味がない。
さて、日本IBMは、Lotus Notes/Domino 6.0.xのサポートを2007年4月末で終了しているが、国内のユーザーの中には、今でもサポート切れのLotus Notes R4あるいはLotus Notes/Domino R5を使い続けているユーザーも少なくないようだ。彼らがNotes/Domino 7やNotes/Domino 8へのアップグレードをためらうのはなぜだろうか。その大きな理由のひとつは、R4やR5で開発したアプリケーションが、Notes/Domino 6.5以降と互換性がないことだ。関数やスクリプトの仕様が変わったために、移行にあたっては既存のNotesアプリケーションのコードを修正する必要がある。もちろんその作業にあたってはコストが発生する。ならば、現状問題なく動いている環境をあえて変える必要もないのでは……。そのような判断が、サポートの切れたNotes/Dominoを抱える多くのユーザー企業を生み出す結果となっている。