どのプロジェクトに適用すべきか
このようなスケジュールで強制適用となる事業年度がスタートしたとして、次に、どのプロジェクトに対してこの基準を適用するのか、という点が問題になる。ここでは3月決算の会社を前提に話を進めたい。
「工事契約に関する会計基準」では、プロジェクトの開始により、大きく2つの方法が認められている。まずひとつは、2009年4月時点(期首)に存在するすべてのプロジェクトに対してこの基準を適用するという方法だ。この方法によると、たとえば2009年の2月に開始したプロジェクトが、4月になっても完成せず続いている場合、工事進行基準が原則適用となる。これに対し、もうひとつは、2009年4月以降に開始するプロジェクトに対してこの基準を適用するという方法だ。これによると、先ほどのように4月以前に開始したような仕掛中のプロジェクトに関しては、この基準の適用外ということになる。
これらは選択適用であり、会社の任意で決めることができる。それでは、どちらの方法を選択することが合理的だろうか。一般的には、工事進行基準への対応が十分でない会社は、できる限り適用開始を後に遅らせざるを得ないため、後者の方法を選択し、2009年の4月以降に開始となるプロジェクトからこの基準を適用する、といった方法が合理的と考えられる。もちろん、それまでに工事進行基準の対応を済ませておくことは大前提であるが。
12月決算の場合にも同様に、このようなふたつの方法が認められているため、会社の対応状況や開発プロジェクトの状況なども考慮しながら、どちらの方法を選択するか決める必要がある。
(後編は2月6日に掲載予定です)
筆者紹介
木村忠昭(KIMURA Tadaaki)
株式会社アドライト代表取締役社長/公認会計士
東京大学大学院経済学研究科にて経営学(管理会計)を専攻し、修士号を取得。大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。
2008年、株式会社アドライトを創業。管理・会計・財務面での企業研修プログラムの提供をはじめとする経営コンサルティングなどを展開している。