ここでは上記のうち、「仮想ボリューム」に注目したい。
サーバがストレージを認識する際には容量やストレージへの“パス”など、そのストレージの物理的な構成に依存することが多い。このため、これまではストレージの構成変更や機種変更は非常に面倒な作業であり、ストレージ管理における柔軟性は低かった。仮想ボリュームを提供するストレージ仮想化技術が実現されることで、管理者は物理ストレージのベンダーや筐体内の構成を意識することなく、「必要なときに必要なだけ」のストレージを利用することができるようになる(図6)。
仮想ボリュームは複数の物理ストレージ筐体から構成されるため、複数ストレージを接続するストレージネットワークの存在が前提となる。仮想ボリュームを実装する方式はいくつか存在し、現在は「アプライアンスをストレージネットワークに接続して実装するもの」「エージェントソフトウェアをサーバに導入して実装するもの」「SANスイッチ上で実装するもの」などが製品化されている(図7)。
ITインフラが集中するデータセンターでは、サーバと同様にストレージの管理も効率化する必要がある。ストレージに格納されるデジタルデータは増加する一方であり、1人の管理者が受け持つストレージの容量や台数の増加の度合いは、サーバのそれとは比べ物にならないといえる。ストレージ仮想化技術はストレージを“プール化”して自由に使用するための技術であり、今後のストレージ管理において確実に普及すると思われる。
「ネットワークの仮想化」も必要か?
サーバ仮想化やストレージ仮想化は、今後特にデータセンターで普及が見込まれる技術である。ではサーバとストレージを結びつけるストレージネットワークにおける“仮想化”はどうであろうか?
現在、ストレージネットワークを構成する通信プロトコルはさまざまである。これらのプロトコルが用途に応じて使い分けられているが、今後は「プロトコル変換」や「カプセル化」などの手法でこれらのプロトコルの違いを吸収する技術が登場、普及するかもしれない。また、これまでのプロトコルの問題を解決する新しいプロトコルが出現して、それに集約されるかもしれない。
ITインフラが集中するデータセンターにおいては、“集約”に対するニーズは特に高い。なぜならデータセンターでは、複数のネットワークインフラを別個に用意し、それぞれを管理する負荷が非常に大きくなるからである。ただ、メールやウェブなどのIP系のトラフィックと、SCSIに代表されるストレージ系のトラフィックでは求められる要件が大きく異なるため、単純な共存というのも難しい。この点については、次回以降で詳しく解説する予定である。
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前回と今回で、ストレージネットワークの登場の背景と現在、今後の用途について解説した。これまではやや概念的な内容が多かったが、次回は「ストレージネットワークの概要」をテーマに、ストレージネットワークを構成する具体的な要素技術について紹介する。次回も是非、お付き合いいただきたい。