商船三井--総合海運企業が目指したグローバルポータル構築の条件とは?

富永康信(ロビンソン)

2009-03-13 16:38

 石炭の海外輸送から出発し、1884年に大阪商船として創業した商船三井は、今年で125周年を迎える。2009年2月現在、国内外にグループ会社数267社(連結決算対象会社)にグループ従業員数約9600人の規模で、コンテナ船やタンカーなど運航船舶を845隻抱える、世界最大級の総合海運企業となっている。

 同社は、2008年に全世界に展開するグループ会社の求心力を強化し、シナジーを最大化するグローバルポータルの構築を目指した。

本社・子会社・現地法人でバラバラのポータル

 世界人口の増大とグローバリゼーションが急進展することで、世界の海上荷動き量は飛躍的に増大している中、商船三井と同グループでは2007年度から「質的成長」をメインテーマとした中期経営計画「MOL(Mitsui O.S.K. Lines) ADVANCE」をスタートさせた。

 計画では、安全運航の強化やグローバル展開の加速、グループ総合力の強化など5つの全体戦略を策定しているが、特に海外拠点の拡大に伴い、本社と世界各国にある拠点間との情報共有が重要な課題となっていたという。

 商船三井では、2000年から情報共有の基盤にIBM Lotus Notes/Dominoを利用し、並行してWindowsの共有ファイルサーバとIBM WebSphereを活用。本社はイントラネット上のポータル、国内のグループ会社はインターネット上の専用ポータルをそれぞれ利用し、海外では各国で独自に構築しているといったバラバラの状態だった。

 また、国内外でのコミュニケーション手段は電子メールが中心で、世界各国の海を行き交う船舶において航海士や機関士として働く海上社員に対しては、時間も場所も異なる中、船舶運航関係の通達を速やかに周知することが困難になっていた。

本社の情報が驚くほど少ない

 「グローバルポータルの構築にあたっては、主に次の3つの動機があった」と語るのは、商船三井の情報システム室で室長代理を務め、今回の導入プロジェクトを指揮した清友大造氏だ。

 その動機の1つが、グローバル人事制度の一環として毎年開催している「MOL College」において、「海外で勤務する従業員が得られる会社の情報が驚くほど少ない」という意見が出されたことだったという。MOL Collegeとは、世界各地の現地法人から有望な社員を本社に集め企業理念を伝えるとともに、社員間の交流を通じて相互理解を深めるためのイベントだ。

 「社員の結びつきを強化し、社内の情報共有を進めるため、世界中のどこにいてもスタッフの顔や担当業務が分かるアドレス帳を作成したらどうかというアイデアが生まれた」(清友氏)

 このアイデアを実現するため、それまでバラバラに利用されていたポータルを情報共有基盤として一元化することが検討されたという。

 2つ目は、定期航路部門での情報共有だ。代理店を含めると80数カ国、約250拠点に業務システムが分散構築されていることから、現地法人を対象に情報共有が可能なサイトが必要とされていた。

 そして3つ目は、海上勤務の長い社員に対する通達の手段だ。海運業務に関係する世界各地での法制度の変更状況などを含め、同社では従業員に対して多数の通達が出される。これまで、乗船前に通知できなかった連絡事項については、後日書面やCD-ROMで配布していた。これらの通達を、ネットワーク上で共有できる仕組みがあれば、かなりの効率化を図れることが予想された。

清友大造氏と高木美絵子氏 「社員の結びつきを強化し、情報共有を容易にすることを目指してグローバルポータルの構築に着手した」と語る、商船三井、情報システム室室長代理の清友大造氏(左)と、アシスタントマネージャーの高木美絵子氏。

個人参加型の機能を強化

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