エジプト カイロにて開催されたマイクロソフト主催の学生技術コンテストにて、高等専門学校生として日本から初めて世界大会に進出した東京工業高等専門学校のチームCLFS。同チームが参戦したのは組み込み開発部門で、この部門は世界大会進出の時点ですでにベスト20に絞られている。そのため、せめて1回戦のベスト12には残りたい、残るのではないかとの思いが彼らの中にあった。
しかし、実際に世界大会に参戦してみると、やはりほかの代表チームとの違いを実感したのも事実だった。東京工業高等専門学校の長田学氏、宮内龍之介氏、佐藤晶則氏、有賀雄基氏の4人は、世界規模の大会で何を感じたのか。
長田氏は、他チームとCLFSの違いについて、「他チームはかなりの時間をかけて準備していた。僕たちがこの大会に向けて取り組みはじめたのは3〜4カ月ほど前のこと。こんな短期間で仕上げたチームが世界で戦うのはやはり難しいと感じた」と話す。世界トップクラスの作品を見ると、「自分たちの企画力や考え方はまだ浅かった。今回のImagine Cupのテーマとなっていた国連のミレニアム開発目標についても、他国は日本より身近に感じていて、僕たちでは思いつかないようなアイデアも出ていた」と長田氏。宮内氏、佐藤氏、有賀氏も「準備不足や調査不足が大きな敗因のひとつ」と声をそろえる。
CLFSの開発したシステムは、幼児死亡率の引き下げをテーマとした「The Electronic Maternal and Child Health Handbook」(電子母子手帳)だ。日本の母子手帳をヒントに、体重計や血圧計などのデバイスを使って日常的に健康を管理できるシステムで、アイデアとしてはチームメンバーもかなりの自信を持っていた。苦手な英語のプレゼンテーションは全員で分担し、語学アドバイザーとして彼らを支援したRamona Coulson-Watanabe氏のサポートを得て、堂々と英語で審査員の前に立った。
ただし、準備期間が短かったことを敗因のひとつに挙げつつも、メンバーらは「他国ではImagine Cupに対する取り組みのレベルが大きく違っていると感じた」とも話す。政府や企業が積極的に学生をサポートし、このような大会で成績を残せるようバックアップしている国も多いためだ。日本では、ソフトウェアデザイン部門に企業メンターがつくものの、組み込み開発部門では「世界大会進出が決まるまでは、(マイクロソフトを含め)誰かが応援してくれることもなく、チームメンバーが独自でがんばるしかなかった」と、Coulson-Watanabe氏は語る。「そんな状況の中で世界大会参戦を勝ち取った彼らは本当によくがんばった」と、同氏は数カ月間の彼らの努力をねぎらった。