――リスクの見える化は、ベンダーにとっても重要な提案材料になってくるでしょうね。そうした点も含めて、最近では導入実績を着実に上げているSaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)のサービスが増えてきました。さらに大手の企業では、プライベートクラウドへの取り組みも活発化してきています。そうした中で、CIOに最も求められる点は何だとお考えですか。
日高 すでに実績を上げつつあるSaaSやPaaSのサービスは、さまざまな導入事例も明らかになっているので、CIOにとっては機能の吟味やリスクアセスメントを十分に行うことができると思います。さらにプライベートクラウドはすでに多くの企業が取り組みを始めており、これからますます本格的に利用されていくでしょう。
そうした中で、今後CIOに求められるのは、まず先ほどお話ししたように、ビジネスプロセス改善とコスト低減の観点からクラウドをどう利用するかといったビジネス判断を行うことです。
そしてもう1つ、CIOに求められるのは、クラウドに関わるテクノロジーの“目利き”役を果たすことです。これから企業が利用するIT環境は、パブリッククラウドと既存の社内システム、さらに大手であればプライベートクラウドという選択肢も入ってきます。実際にはそれらを有効に使い分けるハイブリッド利用が多くなってくると思われます。
そこで重要になってくるのは、クラウドで使われているITツールやサービスの仕組みも含めたテクノロジーをどう選択し、利用の仕方も合わせてどのように自社のIT環境、ひいてはビジネスにフィットさせていくか、です。クラウドに対するCIOの最も大事な役割は、そのテクノロジーの目利きにあると、私は考えています。それが先にお話ししたビジネス判断にも深く関わってくるわけです。
クラウド時代の到来は、まさにCIOのイニシアチブを発揮する絶好のチャンスだと思います。CIOの皆さんには、ぜひその心意気で臨んでいただきたいと思います。
日高信彦(HIDAKA Nobuhiko)
ガートナー ジャパン代表取締役社長。
1976年東京外語大外国語部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。27年にわたり同社のビジネス・ソリューション事業で数多くの業績を残す。1996年、アプリケーション・システム開発部長。1999年、CRM社内ベンチャー・コアポイントのアジア・パシフィック担当ジェネラルマネジャー。2001年、アジア・パシフィックCRM/BIソリューション統括。2002年、eビジネス・ソリューションズ CRMソリューションズ参与。
2003年4月、ガートナー ジャパン株式会社代表取締役社長に就任。
テクノロジのトレンド、マーケットのトレンド、他のユーザーがどのようにITを使いこなしているのかという3つの情報を正確に、満遍なく収集し、同時に、ガートナーに蓄積されたグローバルな情報をベースに、迅速かつ的確なアドバイスで日本企業の経営戦略策定をサポートしていくことを掲げている。
ガートナー ジャパンでは、2009年11月11日〜13日に「Balancing Cost, Risk and Growth―ITで挑む、視界ゼロ時代の競争と成長―」をテーマに「Gartner Symposium/ITxpo 2009」を開催する。
Gartner Symposium/ITxpoは、ガートナーが毎年、企業のCEOおよびCIOをはじめとするITリーダー向けにリサーチの集大成を発表している世界最大級の戦略的ITイベント。本シンポジウムでは、CIO向けの提言を含め、さまざまな角度からITでビジネスの競争と成長に挑むための具体的指針・施策・展望を提言する。