物流大手のバンテックは10月28日、経営管理基盤システムとして「SAP ERP 6.0」を導入したことを発表した。経理・財務情報に営業情報をSAP ERPに統一してデータベースを一元管理、経営に必要な情報を可視化させて、迅速に経営判断を下す仕組みの確立を目的とした。
バンテックは、持ち株会社のバンテック・グループ・ホールディングスのもと、自動車部品物流を中心にした国内物流(ロジスティクス)を主力としていた。持ち株会社の下には、国際貨物輸送(フォワーディング)を主力とするバンテックワールドトランスポートがいる。この3社は4月に合併しており(社名はバンテック)、ロジスティクスとフォワーディングの両事業を国内外で展開している。
今回の経営管理基盤システム導入は、合併を機にグループ経営の強化、経営資源の最適化を推進して、今後の主力市場である海外で競争を高めることが背景になっている。システムの選定では、統合基幹業務システム(ERP)パッケージとしてグローバルに普及しているSAP製品を採用。受注競争に打ち勝ち、素速く意思決定ができるツールとして会計基盤の統一、営業管理システムといった全社共通の経営基盤の高度化による課題解決を図るのが狙いとしている。
新しいシステムは、会計情報をSAP ERPで一元管理し、従来に比べて会計情報の精度が向上、日次ベースの管理ができるほか、決算関連、管理連結に必要な帳票の作成が容易になるとしている。既存のシステムとの連携で、債権債務管理、決算処理のすべてがSAPアプリケーションで行える。これで業務プロセスの効率化、リスク管理の高度化が図れるとしている。
システム導入には、協力パートナーとしてアビームコンサルティングを指名、アビームが保有する運輸業務向け導入テンプレート「アビーム・トランスポーテーション・ソリューション」と、SAPが提供するプロセス統合機能(Process Integration:PI)を活用している。カスタマイズを回避して、アドオン開発を極力抑えることで、導入期間を短縮。2008年10月のプロジェクト開始から半年後の4月からシステムの部分稼働を実現している。
今回は、SAP ERPとともに、SAPの顧客関係管理パッケージ「SAP Customer Relationship Management(CRM)2007」とビジネスインテリジェンス(BI)パッケージ「SAP BusinessObjects」も導入している。
バンテックは、ロジスティクスとフォワーディングが一体化し、新しいビジネスチャンスの創出や物流のワンストップサービスの実現など、合併のシナジー効果を十分に発揮するためには、営業力の強化が必要と判断。SAP CRM 2007とSAP ERP 6.0で、売り上げや損益などの経理情報に裏打ちされた顧客情報を一元管理。また営業プロセスを標準化して、主要業績評価指標(KPI)を策定してPDCAサイクルを確立、営業活動の“見える化”を通して営業業務の変革を図った。営業プロセスとKPIを含めて、アビームのテンプレートを全面的に活用することで、短期間、低コストでシステムの立ち上げを可能にしたとしている。
今回のシステム導入では、業務現場でのシステムの使いやすさと定着の促進を図る導入アプローチを実行している。営業活動を通じて収集された情報はBIに集約され、業務部門から経営層によるマネジメントまでが有機的につながることで、意思決定での精度の向上、迅速化を図って、企業活動全体の効率を高めていくとしている。