野村総合研究所(NRI)とNECは2月3日、金融機関におけるオペレーショナルリスク(オペリスク)管理の高度化を実現するため、業務要件や各種データ分析手法の標準フレームワークを共同で構築する取り組みを開始したと発表した。
標準フレームワークは、2010年中に完成する見込みで、その後、金融機関を対象に、NRIのシステムソリューションやNECのリスク分析サービスとして、順次、提供していく方針だとしている。
オペリスクとは、近年、金融機関での取引が複雑となり、想定外の重大な事務ミスや、広大な影響を及ぼすシステムトラブルの発生が散見されるのを受け、監督当局が定義した金融機関の業務に関するリスク事象を指す。2007年より「バーゼルII」(金融機関の新たな自己資本比率規制)が開始された。
NRIによれば、このオペリスクは新しい定義であり、管理要件に関する業界標準の考え方がまだ存在していないという。また、監督当局は、各金融機関が創意工夫をして、自主的に高度化の検討を進めるよう促しているが、金融機関が独力ですべての業務要件を定義するには限界があるとしている。
NRIはこれまで金融機関に対して、「バーゼルII」や「ソルベンシーII」(保険会社に対する新しい財務健全性基準)対応のオペリスク管理体制を構築するためのコンサルティングサービスを提供してきた。またNECでは、同リスクの分析手法の研究に長年取り組んでおり、その計量化コンサルティングサービスを提供している。両社は、オペリスクに関するこれまでのノウハウを生かし、標準フレームワークを構築する予定だとしている。
また、NRIとNECは共同で、実務家や有識者、研究者が集う「オペレーショナル・リスク管理高度化研究会」を、今年1月から半年間の予定で開催している。同研究会は、実務家のみならず、バーゼルIIの制度設計に携わったメンバーらが、実務への適用実現性を重視しながら、あるべき業務要件のレベルや幅を議論し、整理するものだという。議論のテーマは、損失データの取り扱いと分析手法、潜在リスクを管理するためのシナリオ、リスク削減の効果を向上させる内部統制の仕組み、運用負荷を軽減させた計量モデル、事務改善や企業価値向上への効果など。研究会の最終成果は、2010年中をめどに取りまとめられ、標準フレームワークにも盛り込まれる予定だという。