日本IBMは3月24日、全世界のIBMが実施した「IBM Global CFO Study 2010」に関する説明を行った。
Global CFO Study 2010では、世界81カ国、約1900名のCFO(最高財務責任者)および経理財務部門の上級管理職を対象として調査を行っている。調査は2年ごとに行われており、今年で4回目となる。激変する経営環境において、CFOや経理財務部門が果たすべき役割や課題などについて浮き彫りにしているのが特徴だ。
日本IBM、グローバル・ビジネス・サービス事業、戦略コンサルティンググループ経理財務変革コンサルティングの松尾美枝氏は、「今回の調査は、不確実性が増すなかで企業がよりスマートになるために、経理財務部門が果たす役割について探ったものになっている」とする。
「経理財務部門本来の“業務の効率化をさらに推進する”必要があると同時に、CFOや経理財務部門が“経営者や他部門に対してビジネスへの洞察を提供して意思決定を支援する必要がある”という2つの重要な役割がわかり、これらの両方を備えた“バリュー・インテグレーター”になることで、企業の成長を支援できることが示された」(松尾氏)という。
この調査では、経理財務部門に必要な能力として「業務効率化」と「ビジネス洞察力」を挙げ、それらを軸にして部門としての能力を「バリュー・インテグレーター」「効率的な報告者」「従来型経営参謀」「スコアキーパー」という4つのカテゴリに分類している。
バリュー・インテグレーターは、業績最適化、予測的知見、企業リスク管理、経営意思決定を行えるビジネスタイプと位置づけられている。
「バリュー・インテグレーターは、業務効率とビジネス洞察の両方に対応したタイプであり、他のタイプに比べて、収益成長率、投下資本利益率、EBITDAといった指標において高い実績をあげており、企業の好業績を支援している」(松尾氏)という。
調査結果を見ると、グローバルでは全体に対するバリュー・インテグレーターの構成比が23%であるのに対して、日本では8%となっている。ビジネス洞察力に優れた企業も、グローバルでは35%であるのに対して、日本では11%に留まっている。
松尾氏は「日本では、経理財務部門とは別に経営企画部門があり、役割分担していることが要因といえる。だが、今後のCFO、経理財務部門には、ビジネス洞察力が求められるようになるだろう」とした。欧米の企業では、CFOの権限が強かったり、CFOの傘下に経営企画部門が設置されたり、経理財務部門と経営企画部門が近づいている例が増えているのに対して、日本の企業ではそうした例は極めて少ないという。
松尾氏は「今回の調査結果は、日本の企業において組織の改革が迫られていることを裏付けるものになる」とした。