SAPのSaaS戦略:Business ByDesignは「スイート」が特徴 - (page 2)

末岡洋子

2010-05-27 09:00

SAPはオンプレミス、オンデマンド、オンデバイスを提唱している。3つの統合について、どのような技術戦略を考えているのか?

 これら3つの世界を統合するレイヤーを用意し、3つがきちんと連携できるようにします。顧客は統合作業にコストを割きたくないと考えているのですが、SAPのソリューション部隊が統合に責任を持ち、SAP以外のソリューションとの連携も実現していきます。

 オンデバイスにより、これらオンデマンドソリューションに、追加料金なしで、どこからでもアクセス可能になります。SAP社内では、オンデマンド、オンプレミスの各部門がやり取りをしており、一貫性を持った体験を提供できると考えています。

プラットフォーム戦略では、どのような考えを持っているのか?

 今年のSAPPHIREではプラットフォームに関する発表は行いませんでしたが、計画はあります。Business ByDesignはパートナーがソリューションを補完、強化できるインフラを持ち、これが土台となります。今後、何らかの発表があると思いますが、SAPのフォーカスはビジネスソリューションの提供なので、プラットフォームのみを提供することはありません。

 Sybaseの買収計画を発表しましたが、Sybaseはモバイル向けのインフラ技術を保有しています。買収でこれを拡張し、モバイル開発プラットフォームにしていく計画です。

SaaS分野では、Salesforce.comなどの専業ベンダーの後を追う立場になる。どのように対抗していくのか?

 Business ByDesignはスイートであるという点を強調していきます。この業界の知識、経験、スキルをいかし、豊富な機能と体験をグローバルに提供します。これは差別化になると思います。

 1社ですべてを提供できるとは思っていません。顧客の中にはSalesforceを導入しているところもあるでしょう。このような顧客には、我々のソリューションを統合していきます。しかし、単体のSFAやCRMのオンデマンドソリューションだけでは完全ではありません。コアのERPにより、見込み客が実際のセールスに結びつき、どのぐらいの売上になったのかなど、ビジネス全体を把握できることは強みです。スイートでアプローチした結果、われわれのオンデマンドを選択してくれるのではないかと期待しています。

 強みは、オンプレミス、オンデマンド、オンデバイス、そしてオーケストレーションです。これにより、最高のエンタープライズシステムを実現できると信じています。

Business ByDesignの日本市場提供はいつになるのか?

 日本市場については、社内では決定していますが、社外にはまだ公開していません。2011年以降としか答えられません。

 まずは、現在提供している6カ国(米国、ドイツ、フランス、イギリス、インド、中国)を補完していきます。米国であれば、カナダやメキシコ、ドイツであればスイスやオーストリアなど近隣の国で提供を開始し、その後で他の地域に広げます。

中規模向けでは「SAP Business All-in-One」がある。Business ByDesignと既存製品とのすみわけは?

 まず、製品がオーバーラップしないように開発時から注意しています。「SAP Business One」は8〜50ユーザー程度の小規模企業向けで(Business ByDesignとは)重なりませんが、All-in-Oneは同じ中規模企業を狙っています。深い業界知識や機能を必要とする場合はAll-in-Oneになるでしょう。

 全体として、ミッドマーケット向け事業は成功しています。中国やインドなどは潜在市場が大きいため、今後は新興市場でも力を入れていきます。

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