IDC Japanは7月14日、国内「eディスカバリー」関連市場規模予測を発表した。
eディスカバリーは、米国訴訟における証拠開示の対象が電子的な情報であるものを指し、紙の文書類(電子化して提出)、電子メール、インスタントメッセージ、音声通話記録、コンピュータ上に保存された文書、イントラネットおよび電子掲示板などに保存された電子データやこれらから削除された文書およびデータなどが対象になる。
IDCでは、訴訟に遭遇した企業が、事後的対策として電子的な情報や文書を収集して絞り込み、共通ファイルフォーマットに変換して保存するとともに、あらかじめ規定された訴訟関連の情報や文書を管理する「eディスカバリー・訴訟支援ソリューション」と、予防的対策として、書類保存制度(Document Retention Policy)を整備し、情報ライフサイクル管理の概念をベースに、訴訟に関わる記録や情報を一元管理する「eディスカバリー・訴訟準備基盤ソリューション」とを総称して、「eディスカバリー関連市場」と定義している。
レポートによれば、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む、米国の電子証拠開示制度への対応を目的とする国内eディスカバリー関連市場の投資額規模は、2009年が69億円となった。2010年が133億円で前年比成長率91.0%増、2014年には484億円へ拡大すると予測している。
近年、特許および知財、製品安全、価格カルテル、連邦海外腐敗行為防止法(FCPA:Foreign Corrupt Practices Act)などの分野で、日本のグローバル企業が米国を係争地とする訴訟に巻き込まれるケースが増加している。また、eディスカバリーに係る手続の対象となる国および地域も、米国からカナダ、EU諸国、日本、アジア新興国へと拡大しているという。
IDCでは、訴訟リスクへの対応は、海外ビジネスを展開する日本企業に共通の課題となっており、製造業の大規模リコール問題などを契機に、事後的対策としてのeディスカバリー・訴訟支援ソリューションから、予防的対策としてのeディスカバリー・訴訟準備基盤ソリューションへのシフトが加速し、高成長を維持するとみている。
また、eディスカバリーの分野では、国境を越えたクラウドコンピューティングの普及拡大に伴い、情報やデータのライフサイクル管理を担うサーバやストレージの最適配置が重要になっているという。IDC Japan、ITスペンディングリサーチマネージャーの笹原英司氏は「プライベートクラウドをグローバルで構築および運用するユーザー企業は、アプリケーション、プラットフォーム、インフラストラクチャの各層における外部プロバイダーとの責任分担を明確化した上で、情報やデータの置き場所や保存期間と係争地の関係を考慮しながら、攻めの訴訟戦略を支援するICT利活用を検討すべき」とコメントしている。