業界10社、IPv6利用におけるセキュリティ上の課題を検証する協議会を設立

柴田克己(編集部)

2010-07-28 20:40

 インターネットの「住所」として割り当てられる番号資源である「IPv4アドレス」の枯渇問題が提起されて久しい。2013年までには世界的に枯渇すると見られているIPv4アドレスから、事実上無限(約340澗個:340兆の1兆倍の1兆倍)のアドレスが使用可能となる「IPv6」への移行が進められているが、主にこのIPv6におけるセキュリティ上の課題について検証を行うための協議会が、IT関連業界および団体によって7月28日に設立された。

 この「IPv6技術検証協議会」の設立時点での会員は、独立行政法人情報通信研究機構、F5ネットワークスジャパン、KDDI、ソフトバンクBB、タレスジャパン、日本電信電話(NTT)、バッファロー、パロアルトネットワークス、ブロケード コミュニケーションズ システムズ、マイクロソフトの10社および団体。会長には情報通信研究機構理事の榎並和雅氏、副会長にはマイクロソフト業務執行役員CTOの加治佐俊一氏が就任している。

榎並和雅氏 会長を務める、独立行政法人情報通信研究機構理事の榎並和雅氏

 IPv6の仕様については、これまで相互接続性、プロトコル検証などの「あくまで最低限の範囲での検証」(榎並氏)を「IPv6普及・高度化推進協議会」が中心となって実施してきたが、今回設立されたIPv6技術検証協議会では、今後さらにIPv6の利用が進む状況の中で、IPv4/IPv6の併用、IPv6への移行を見据えたネットワーク環境において、どのようなリスクが内在し、そのための技術的対策をどのように考えるべきかについて協議していくという。

 榎並氏は、「IPv6では、一般的に“エンド・ツー・エンドの暗号化および認証”によって、IPv4よりもセキュアになるという定説があるが、一方で実際には自動設定機構に起因する経路詐称やネットワークの境界でブロックするという既存のセキュリティ戦略が通用しなくなるといった課題も内在している」とし、同協議会ではそうした課題の収集と、会員社の持つIPv6対応製品での検証、対策技術の検討と評価を行い、情報公開を行っていくとした。なお、セキュリティ検証のためのテストベッドは、マイクロソフトの大手町テクノロジーセンター内に設置される。

加治佐俊一氏 副会長を務める、マイクロソフト業務執行役員CTOの加治佐俊一氏

 同協議会の副会長である、マイクロソフトの加治佐氏は、今後の具体的な活動と期待される成果について言及。協議会の設立と同時に「セキュリティ部会」を設置して、これまでの調査研究を通して確認された、60以上のIPv6のリスクについての検証に着手することを表明した。

 「現時点でも、実際にIPv6を実装した機器は増えている。最低限の相互接続性は確保されているが、それらのセキュリティ機能、実装手法、性能評価などに関わる実環境検証については検討の余地が多く残されていた。同協議会では、メンバーによる対策の検討と対策の確立を目指し、リスク情報と対策をIPv6普及・高度化推進協議会と連携しつつ公開していく」(加治佐氏)

 なお、IPv6の利用環境における安全性を、企業や団体が設立した協議会で検証していく試みは世界初のものになるという。同協議会では、日本での成果を海外にもフィードバックしていくとともに、今後、プロバイダーやPCベンダーを含む、IPv6にかかわり検証作業に貢献が可能な企業、団体に参加を呼びかけていく方針という。

加治佐俊一氏IPv6技術検証協議会では、IPv6について主にセキュリティ面での課題を収集。会員社の製品を使った技術検証を行い、対策技術の検討と評価、情報公開を行っていく

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