事業の成長志向に縮小志向で応えるIT部門 - (page 2)

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-04-14 21:30

IT部門を“つぶす”複合要因

<1>単に今の状態は中長期の展望がなかったのではない。大きな誤りを犯した

 中長期の展望がない企業もあるだろうが、多くの場合、全くないわけでもない。原因は、むしろその展望が、ITの本質や進化の方向を十分に踏まえきれないまま、導入をしてしまったことにあると思う。また、これを実行するための組織的なセオリーを自分たちの経営風土の壁を理由に、導入してこなかったことにあると考えている。

<2>単に新しいことに取り組んでいないのではない。そういう仕組みを作ってこなかった

 筆者も、企業経営が危うい中で新しいことに投資しようなどと言うつもりはない。そういう中でも、なんとか中長期的な「サステナビリティ」や「イノベーション」を図ることができるよう、投資配分の仕組みを導入、維持してこなかったことが問題であると思っている。

<3>ITの構成と構造を真剣に考えてこなかった

 この問題は難しい。すなわち、日本企業の事業形態に対応できるだけのITが従前、供給者側(つまり、コンサルタントやベンダー)になかったという要因もあると筆者は思っている。ただ、上述のとおり、ITの本質や進化を踏まえない導入を行ってしまった側面は否めない。

 次回以降で詳述して行こうと思うが、ITは日本企業が得意な“カイゼン”で進化するのではなく、日本企業が苦手な“リストラクチャリング”で進化する。これができていないことが問題であると思っている。

<4>人は育てられないし育っていない

 ここは、批判を恐れず言えば、人材を育成するということに、自分の成功体験を重視しすぎてきたのではないかと思う。多くの経営層、管理職層は企業の中ではその組織の中では一定の成功者だと思うが、「自分が高い問題意識を持っていたから成長することができた」と思っている人々が多く、「自分を育ててくれた先輩がいたから自分が育つことができた」との経験を持っている人が多い。

 それはそれで重要なことではあるが、それだけでは、技術進展の速度が速く、多様な専門性の理解と発揮を、少ない人材でやりくりする情報システム部門の育成に当てはめることに無理が生じる。科学的かつ包括的なアプローチが、情報システム部門の人材育成にこそ必要であると思っている。

 上述の説明を読んで頂いても、今ひとつピンと来ないだろう。ただ今回は、このレベルの説明に留めさせて頂く。次回以降、こういった複合要因への対処に関する議論を、“部長”とともに進めていくことにしたい。

宮本認(みやもとみとむ)

ガートナー ジャパン株式会社

コンサルティング部門マネージング・パートナー

大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。

編集:田中好伸

Twitterアカウント:@tanakayoshinobu

青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。

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