ストーリーで考えるIT戦略の本質(4/5)
(編集部より:ITコンサルタントである筆者の宮本認さんと情報システム部長は、IT戦略はどうあるべきかを議論しています。いくつかのポイントを抑えてきたところで、IT戦略の本質に迫ります。会話はすべてフィクションですが、実際のコンサルティング現場で行われている会話にかなり近いものです)
メソッドにストーリーを通す
「で、スケジュールで締めってこと?」
「そうです」
「スケジュールを考える時には、カネとヒトを条件にしながら考えていけってことなんだね?」
「そうです。一気には行かないと思いますし、いろいろと失敗のリスクもあります。あと、部長、無い袖は振れないですしね」
「うるさいよ。で、戦略ってのを作る流れはわかった。ただ、2つ質問がある」
「どうぞ」
「この前の話の時にリストラしろって言ったじゃない? それはこの戦略立案の中でどう解釈したらいいのかな?」
「それは最初の“セレブかどうか?”っていう質問の部分、すなわち、ITとは何かってところから始まり、最後のスケジュールまでず~っと考え続ける問題です」
「ん? どういうこと?」
「部長、戦略の中には“何もしない”って戦略もあっていいんです。例えば、国に例えるならば、コスタリカのように非武装中立って戦略があってもいい。ITだって何もせずにじ~っと待つっていう戦略があってもいい」
「なるほど」
「でも、部長の会社は何もしないって戦略を取れる企業というわけでもない。現に競争はしているわけですから、従業員たちの生産性も上げないといけないのも事実。加えて、何もしないというのとできないというのは違います。部長のところは、残念ながら、いろいろとしなければいけないんだけど、資金が不足している状態です。しかも、乾いた雑巾ですが、カラッカラというわけでもない。実際、部長たちよりも安くやれている会社が存在しているわけですから。こういう場合の選択肢はやっぱりリストラから…ということだと思っているんです」
「徹底的な経済性を追求することをベースに、進度を上げるところは上げ、それ以外のアプリケーションやインフラなんかは徹底的に安くするってことなんだね?」
「そうです。会計システム…これは正直、リターンを生まない。もはや電卓と一緒でしょう。安くなるなら安くする。PCも1人1台いるかどうかもわからない。メールだけって人、結構多くないですか? また、何もいいPCである必要ないかもしれませんね。PCのベンダーさんの中にはPCは生鮮食料品というところもあるくらいですから、台数も減らし、とにかく安く調達するってこともあっていい」
「そうねぇ」
「ネットワーク。ここも安く買える。サーバ。安くてよいサーバがどんどん出ている。性能を落とすとすごく安くなる。こういうダウンサイジングに調達のタイミングやロットを考えて、さらに安く調達していく。ここで、他のコスト削減の原資を作りながらやっていく。いろいろできることはあるってことです」
「うん。要は安くするもの、投資をして高度化していくものを今のメソッドの中で、メリハリを考えたストーリーに仕立てていくってことだね」
戦略とは?
「じゃ、最後の質問。戦略って何?」
「おぉ、ついに来ましたね。僕の考え方を言っていいでしょうか?」
「いいよ」
「一般的な戦略とIT戦略という時の戦略では、実は意味が違うと思っています」
「うん。で?」
「まずは一般的な方から。一般的な戦略ってのは“業務フロー”だと思ってます」
「は? 業務フロー?」
「もっと違う言い方をすれば“敵に勝てる業務フロー”ってことですかね」
「う~ん…どういうこと?」
「世界中で一番戦略を考えている組織、どこだと思います?」
「さぁ…GEとか?」
「なるほど。でも、僕はアメリカ軍だと思うんです。ま、一番ってところに意味はないですけどね」
「まぁ、一番に意味はないだろうけど、絶対に戦略は考えているよね?」