苦しい今こそIT戦略を立案しなければならない - (page 2)

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-09-15 11:15

5.ソーシング

「どこから買うか?」である。実際の支出を「どういうパートナーにするか?」という選択肢がある。従来通り、IT子会社や付き合いの長いパートナーに委託するところ、安いベンダーに頼むところ、クラウドで構わないところを明確にして、予算配分を安定化させる方策を考えておくことだ。あわせて、自社内の人材が今後どの領域、職務にどこまで人材を割くべきで、どのような育成をすべきか、整理しておくと望ましい。

6.ロードマップ

予算、人、事業や経営の要請を含め、その整備計画を立案する。

 こういったことをIT戦略として立案しておくと、以降の取り組みがスムーズになる。

 また、実行段階では経営状況が変わったり、技術の変化も起きたりする。また、あらゆることが想定通りに行くかもわからない。IT戦略を最初に立てる時には不透明だったことが明確になる場合もある。従って年に一度くらいはレビューして頂いて、リプランすることもあわせて必要であると思う。

転換期の日本企業のIT部門へ

 いずれにしても言えるのは、多くの日本企業は転換期にあるということだ。従来通りの成長戦略から、新しい成長戦略を描こうとしている企業が多い。市場も変わる。主戦場が海外に移って行ったり、主力事業が違う事業に移っていったりすることだ。

 コアコンピタンスも変わる。現場の営業力だったものが、商品開発力に移ったり、グローバルサプライチェーンを運営する能力に移ったりする。M&Aや統合をして、新たな業務フローを描き直さなければならないことも多い。

 従ってIT部門も「自分たちにとっての基幹系とは?」「IT投資と効果の考え方とは?」「パートナーや自部門が果たすべき役割とは?」――といった基本的な問いを見直すべきタイミングに来ている。

 多くの企業において、潤沢にIT投資を行えるところは少ないと思う。だからこそ、IT部門が注力すべきところに上手に照準を合わせることが必要であり、それは従来とは明らかに異なる。部門が変わるためにIT戦略を立てる。こういうことなんだと思っている。

最後に

 今回、特集を続ける中で「読んだよ」と言って下さるお客様もいらっしゃった。「アレ、俺か?」という最高情報責任者(CIO)もいらっしゃった。

 その通りです、“あなた”です。

 会話を作る時には、実際にお付き合いをさせて頂いている、10人程度のCIO、部長、情報システム会社の社長を思い描きながら、書かせて頂いた。

「部長、ありがとうございました」

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宮本認(みやもとみとむ)

ガートナー ジャパン株式会社

コンサルティング部門マネージング・パートナー

大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。

編集:田中好伸

Twitterアカウント:@tanakayoshinobu

青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。

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